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「大切な人も出来たし、煙草はやめるよ」なんて笑いながらほざいてやがったアイツは、今頃何処で何してんだろうな。結局禁煙する前にどっか行っちまった、嘘吐きな野郎だった。
手前の隣にゃ今誰が居る?煙草は未だ吸ってンのか?甘やかすだけ甘やかしてほったらかしてんじゃねェのか?今となっちゃオレには関係ねーことだけどよ、前まで手前が居座ってたトコロ。
其処に残していきやがった香りを、温もりを、声を、捨てる。思い出も全部だ、もう思い出す事も無ェだろうよ。随分と長くちらついてたその背中は、忘れた。今度こそサヨナラってか、――なァ。
此れから其処は唯一人、アイツだけの為に空けときてェんだよ。