赤司征十郎、 ああ、眠い。 微睡む意識の中、犬が居た。 従順な犬。 誉めれば尻尾を振って喜ぶ。 隠す事の無い好意、おまけに焼き餅焼き。 可愛かった。 此奴は僕無しでは生けていけないだろうと。 餌も水も住む場所も全て用意してあげた。 暗転。 犬、犬、何処行った。 僕が捨てた。 僕も捨てられた。 野良になった筈の彼奴は今でも首輪を付けている。 リードが無い首輪を光らせながら、自分の居場所だった所で鳴く新しい犬を見ている。 適切な距離を探して、行ったり来たり。 近付いて少し吠えて、離れて後悔して。 大丈夫、お前を嫌ったりはしないよ。 この手紙のナンバーと同じ、わんわんと鳴いて御覧。 泣いて、哭いて、啼いて御覧。 お前は相変わらず可愛いね。 何時まで経っても、僕の犬。 一層の事、嫌いになってくれればいいのに。 その方がお前も幸せになれるのにね、…馬鹿な奴。 〆 - 11 - |