赤司征十郎、 気付いているよ。 僕の眼から逃れられるだなんて、本当に思ってた? ――…ああ、こっちの話。目敏いんだ、これでも。まあそれは追々ね。 一人称を変えてみたり、呼び方を変えてみたり、過去の自分と決別したらあっという間に世界も変わった。生温い付き合いや甘ったれた信条は元々持っていなかったんだ、高みを目指すチームの居心地は好い。求めていた物だよ。案外と洛山も、悪くはないかな。落ち着けると思ったからこそ、こうして毎日手紙を書いているんだしね。 読み返してみると、彼奴が見れば僕だと気付きそうな内容がちらほら。別にいいけどね、見られたって。 ラブレター?はっ、冗談!そんな気持ち悪い事書ける訳が無いだろう。書くとしたら果たし状、お望みなら殴り合いの喧嘩でもしようか。惚気日記には程遠いね。第一、そんな甘さを僕の手紙に求められても困る。見はしても自分には書けない。何故かって、自分の事が一番だからだよ。そんなの当たり前。誰よりも理解してあげられるのは自分自身なんだから。 玲央は素直になれと言うけれど、意地を張っている訳じゃない。こういう性分なんだ。常に勝っていないと意味が無い。敵にも、味方にも、己にも。 それにどうせ、見付かったら大笑いでもされるに決まってる。ああ…想像しただけで腹が立つ。この領域に踏み込んでいいのは僕だけ。お前は其処で指を咥えて見ていればいいんだよ。想像しただけで傑作だ! “僕”が本当の姿かそうではないか。其処から疑問かな? 〆 - 13 - |