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43.エリカの水葬
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9 :氷室辰也
2013/02/15(金) 02:11







 “似て居る ”と言うことは。要するに、同じ様には成れても同じには成れない別物だ。何れだけ姿形が似て居ようと、其処に至る迄の経過が同じで在ろうと、結局其れは違うものでしか無い。――オレはキミを真似ようとした訳では無いのだし、キミはオレを真似ようとした訳では無い。故に、違う。始まりが重なろうと、終わりが被ろうと、同じものには成らなかった。まあ此の場合騙り部が違うのだから当然と言えば当然なんだけど。其れでも似ては居た。縛られたがるキミと、縛ることを厭うオレと。各々が紡ぐ物語は、始まりから終わり迄が良く似て居た。似てはいけない筈なのに、似た。――何故だろう?理由は無いんだ、多分な。偶然と偶然が重なり合って出来た必然。繰り返した悲劇の極一部。詰まらない感傷の、痕。痛みを分かつには其れで充分過ぎたのに。其れでも互いを理解し合おうとしなかった理由は――きっと。結局其れは、オレ達が全く違う人間だと言う証なんだろうな。憧れの先、真似事の終着。…なァ。オレは其れでも、キミの様に成りたかったよ。叶わない願いと理解しながらも、願うことしか出来なかった様に。思い出の一つも取り零さずに、器用に愛した上で、総てを受け入れるキミの強さが。オレは唯、羨ましかった。

( オレにはね。此の宝物達を捨てるべき場所が、見付からない侭なんだ。)


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