■ 準備するものはたったのふたつ ■ |
人を縛るには、首輪も手枷も足枷も、ナイフもカミソリも包丁もいらないんス。好きな人の存在と、大きくて重たい愛があればいいんス。ね、簡単でしょう。だってオレの黒子っちがそうなんだ。あの人、そういう道を歩いてる人がするようなことひとつもしないの。そんなことしなくてもオレのこと縛ることができるって知ってんだもん、そりゃそうっスよ。誰があんな痛いこと望むんだ、オレ(多分)Mだけど痛いこと嫌いだし。消えないと思ってた傷も段々目立たなくなってきたし。人間の治癒能力なめんじゃねぇって感じ。 一生懸命傷つけて、そうでもしなきゃ離れて行ってしまうって怖がってるだけなんスよ。漠然とした不安は誰にもオレにもあるけど、だってそこはほら、オレ以外に誰があの人についていくの、他の奴じゃ無理無理。あんな面倒くさい人オレくらいしか相手できないっしょ、ほんとにね。だけどオレもおんなじくらい面倒くさくて我侭だから、おあいこかもしれないスけど。 【好ましいと思う人にひとつの傷をつけることより、ひとつの優しさで包み込むことを考えなさい。ひとつの愛はどんな脅迫よりも重く、柔らかく、まるで真綿の鎖のようにその心を縛るでしょう。(某偉人の手記より抜粋)】 |