¶:再会とメッセージ。 部屋を片付けていたら、懐かしい本が出てきた。オレはあまり栞を挟む事はない。一度に読んでしまう事が多いから。だがその本は、一日一章と決めていたのを新しく買った本に気を取られて読む事を忘れていたもので。あんなに胸を躍らせていたのに、時間が経ってしまえば感動が薄れてしまうのだ。 もう一度、胸を震わせる事が出来るだろうか。そんな期待を抱きながら、今もその本は開いていない。 後少し、御預け。 (びびび、とキャッチ。) まだまだページの差し替えは終わっていないから完遂と言って良いのかは判らないけれど、ありがとう、ございます。どう声を掛けたら良いのか判らずに気付けば3を離れたわけだが、うむ……一応目上の人となるので、先の挨拶となった。 お互い、良い一年になるといいな。これからも愉しみにしている。 ¶:本棚の間で。 『緑間君ってさ、』そう潜めた細い声が告げたのは、他愛のない客観。オレには意味が解らなくてただ彼女の顔を見詰めていたら先回りをされて、続けざまに一言『好きなの?』と訊かれた。今までならきっと“嫌いじゃない”だったが「興味深い」と、隙間から自然と零れた。 初めて言葉を交わしたけれど、彼女はオレの名前を知っていた。 小さな肩を見送り、そこで初めて名前も学年も知らない事に気付いた。きっと、次に声を掛けられる日まで顔も忘れてしまうだろうと思った。不思議と声だけが暫く耳に残っていた――そんな、放課後の話。 体育館に着いたら余韻は掻き消されたが、話したら多分思い出すと思う。人を覚える時は、声や話し方がより深く残る。性格が出ると思うから、そこに注意が向いてしまうのかもしれない。 落ち着いた人は好ましい。 |