氷解。
雪解けと過ぎる惜しみも笑みのよう、てな。何とはなしに言葉遊び。随分と春めいてきたんやないかと勘繰りたくなる気配がしとるし、日脚も伸びたんやないか。て、願望を口にしといたらええことある。きっと。
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しいんと静まり返っとる中で呼吸音だけが鼓膜を撫でる。ワシはこいつのことを何も知らんけど、口唇に問いを乗せたところで野暮なだけ。頁を捲る音が新しい。劇薬と評する本を開いて視線を落とせば、じんわり蝕まれる。───季節が、ようない。浅く呼吸しとったら彼奴が声を掛けてくれた。いつもなら口にせえへんその言葉に思わず咽喉からひゅう、と零れる。諦念を余儀なくされつつあることを知った。夢見月の近付く宵、桜を見るために。それが口実やった。
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頭痛と眠気でぼーっとする。ここのところずっとや。目え閉じたところで何時間も暗闇を漂うだけ。いい加減飽きるわ。しゃあなしに本に目え落とすぐらいの日々がくだらへんから、いっそ劇薬に口付けしよか。
気が狂いそうや。いや、とっくに気が狂っとるんやろう。きちがいや。眼鏡外さんでええから夢見たい。て、もうじき夢見月やのになあ。可笑しいわ。全部可笑しい。狂っとる。青峰、青峰、なあ、おいで。夢見させて。たったの一瞬でも。
過日が身に沁みる。後悔はせえへん。後悔は。