_ _____ ___✍

「死にたい。」
何処を見渡してもある、日常に有り触れた言葉。ホント、何処にでも落ちてる。皆持ってる。気付いてないヤツもいれば、態と見せびらかして買うヤツもいるし、見せびらかして甘い汁を吸いたいけど視線が怖くてコッソリ呟くヤツもいる。
オレもさぁ、よく使うンだわ。忘れ物した時、遅刻した時、パスミスを繰り返す時、ベンチで唇を噛む時、圧倒的な力に遊びで潰されて爪が食い込む程に拳を握る時。時と場合は様々だ。
でも、「じゃあ飛び降りれば？」って言われても出来ないンだよね。多分無理矢理に屋上の手摺奥へ立たされたら、オレ小便チビる自信があるし。
そう言うと、人は「じゃあ本当は死にたくない、ただの〝構ってちゃん〟じゃないか。」って指差して来るンだよね。構ってちゃん。多分、この一言で誰かの中の小人が一人、殺されるンじゃないかなぁ。構ってちゃん。
確かに、意志や願望が強ければ口よりも体が動くこともあるだろうけど、そうじゃないこともある筈じゃん。スラム街で餓死寸前の子どもに、「本当に空腹なら自分や周囲の人間の肉を裂いて喰らってる筈だ。そうしないお前は真の意味で餓えていないんだ。」なンて言わないっしょ。空腹や不快を泣くことでしか伝えられない乳幼児に、「本当に嫌なら自力で解決してる筈だ。」なンて言えないっしょ？だって、彼等は知らないンだから。この感情や現状を、どうすれば解決することが出来るのか、知らないンだ。だから持て余して泣く。オレもキミも一緒。
want to do構文は存在して良いンだよ。変じゃない。
だから「死にたい。」って死ぬ予定の無い生きながらにして呟く人も正しいンだよ。
生きることが辛くなることは、何もおかしなことでも悪いことでも無いンだから。
知らないだけ。ただこの辛さや不安なンかの気持ちをどうしたら良いのか分からないだけ。大丈夫。ソレで良い。大丈夫。

☛手首を切れない赤子のキミへ

_ _____ ___✍

「世界が逆向きに回ったら良いのにな。」
そうしたら時間も後ろを向いて歩き始める。そうしたら、きっと、あの時に、もう一度──。
でもそうしてしまえば、明日は来ないンだ。それは困る。だって明日真ちゃんと自主練で新技やろうって言ってンだもん。困るなぁ。
世界が逆向きに回ったら、もしかしたらあの日泣かなかったかもしれないし、誰かが堕ちることも落ちることもなかったのかもしれない。夢みたいな日々があったのかもしれない。
けど、もしかしたらそれが今なのかもしれないじゃん？
今この与えられた瞬間が、実は世界が逆向きに回り始めて人が願った最善だったら─。
もう少し、秒針が右回転する世界をプレイしてみる価値が、あるのかもしれないぜ。

☛夢から覚めない青年のキミへ

_ _____ ___✍

「何の為に生きているのかわからない。」
そうだよな、分かんないよなぁ。そんなこと、オレも分からないわ。多分、皆そうなンじゃないかなぁ。
そもそも何年生きるかなンて、人それぞれだし、極端な話じゃ一秒後に死ぬかもしれない。
オレはこの生を、何の為に受けたかなンて知らないよ。知らないけど、明日は数学のテストがあっから学校に行かねェと。ソレ落とすと、放課後に再テストがあってさぁ、部活出れなくなるンだよ。死活問題。先輩方に殺される。何よりも、オレがイヤ。一瞬でも長く、誰よりもボールに触れておきたいの。
アンタは明日何すンの？映画？良いじゃん、楽しンで！
え？其方サンは予定無し？そっかぁ、じゃあ明日は明後日の予定を見付けに行こうか。
きっと絶対、見付かるよ。ただ宝探しが苦手なだけ。焦らなくたって、皆必ず与えられるンだから。

☛雑音に魘されて眠れない十九歳のキミへ

_ _____ ___✍

「オレが悪いンだ。」
全部全部、ぜーんぶオレが悪いンだ。って、そうだなぁ、自分を責めるのは楽だよなぁ。え？あっはは、怒るなって。だって、ホントのことだろ？
人を責めるのが怖いンだ。恨まれたらどうしよう、怒られたらどうしよう。人を頼るのが怖いンだ。断られたらどうしよう。面倒臭がられたらどうしよう。 嫌われたら、どうしよう。
そんなif物語が脳裏を過って、それが大変恐ろしくて、だからキミは全部自分の責任として食べちまう。だってそうすれば誰にも責められない。
誰かに嫌われてしまうことが世界で一番恐ろしいキミは、決して優しくない。偽善にさえも成りきれない。信じる勇気の無いキミの名前は、ただの臆病者だ。
でも、だからこそキミは強い。臆病者だけど、他人の荷物まで自分の物として背負おうとしたキミは強い。
だから、今度はその強さを自分に向けてみる練習でもしてみようか。人のせいに出来る、人に頼れる人になろう。
頼らなくていいなンて、そんな悲しいこと言うなって。何、そんなにオレのこと信頼してくれてねェの？うわぁ、悲しいなぁ。高尾クン、泣いちゃうっ！あはは、ジョーダン。でも、マジ。
キミはそれで良いのかもしれないけどさ、残された側は悲しいンだよ。苦しいし、腹が立つ。自分の不甲斐なさとキミのつまらなくて自分勝手ななんちゃって自己犠牲精神に。
他人の荷物を背負うことは、時には親切になるけれど、時にはその人を甘やかすただの迷惑にしかならないことだってあるンだよ。キミが責めれず背負った罪を、本当は背負うはずだった犯人は自分のせいだと気付かない。その罪の来るしさを知ることは出来ない。出来ないから、繰り返す。味をしめる。いつかその人は独りになると思う。それはとっても辛いこと。独りになるのが怖くて堪らないキミなら、痛い程にわかるンじゃねェの？
大丈夫、責めたりしないよ。そりゃ、キミがキミの罪まで擦り付けたら怒るだろうけどさ、本来キミが背負わなくていい相手の荷物を返した所で、怒る人なンてそうそういないから。もし、怒られたら言ってやれ。「テメェの荷物くらい自分で持て、馬鹿野郎！」ってさ。それでオレのところにおいで。オレが特製キムチフルコース付きで甘やかしてやっからさ。キムチは要らない？ショック！ウマいのにぃ。
ね、大丈夫だよ。万一キミが誰かに傷付けられても、必ず抱き締めてくれる人がいるから。いないなンてないよ。キミが信じれてないだけ。信じる勇気を持ってごらん。世界はそんなに、キミを指差しちゃあいないから。

☛無理矢理泣き方を忘れた金曜日のキミへ

_ _____ ___✍

「変わってしまったね。」
当たり前っしょ。オレもアンタもキミもお前も、全部等しく変化していくもの。心理的にも、肉体的にも。
だってオレ六時間前は部活から帰ってきて腹減り過ぎてさ、もう腹と背がくっつきそうだったけど、今じゃあ空腹は満腹に変わってるし。今は眠いけど、きっと三十分後には夢の中で幸せそうにしてるんだと思うよ。
変わることがイヤなの？変わることって、ダメなんだ？
オレは変わらないことの方がイヤ。つまんないじゃん、そんなの。変わらない景色を永遠と見続けるのは、もしかしたら楽なのかもしれないけど、そんなのオレは退屈でくたばっちまうわ。
変化は当たり前のことなんだよ。明日へ一歩を踏み出してる証なんだから。
もしそれを否定するヤツがいるなら、それはお前の足を引っ張って自分より劣った人間を置いて安堵したい出来損ないだって。安心して。大丈夫、セカイは変化するアンタを拒絶しやしないから。

☞砂に埋もれた鏡を撃ち殺したキミへ