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976.ラストバレル
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2 :
黛千尋
2015/10/06(火) 01:00
曇/60
スーツを着た厳しい顔の男達何人かの前で、オレはいつか「高校では三年間バスケに励み、冬の大会で全日本2位になりました」とか言うんだろうか、と一度頭に過ぎってから、何度かその妄想を反芻している。
世の中には幾らか不思議なことが転がっていたりする。毎日通ってやっていたはずのコンビニの店員が、オレがポイントカードを持っていやしないし、あまつ「カードはよろしいですか」のひと言になんのリアクションをしなくても、機械的にレジを打つのもそのひとつだ。きっとこいつはオレの顔がある日突然整形済みのホストのようになったところで気づきはしまい。
スーツの厳しい顔の男の一人はオレに聞くのだ。「あなたはチームにどう貢献しましたか?」と。オレも着慣れないスーツの膝を少し握ったりしながら、少し考えた風にして、それから最初から決めていたシナリオを話し始めるに決まっている。そこまでは順調さ。何せ影も薄いし目立たないし特段取り柄も無いオレだが、高校の最後の一年は履いて捨てるほどの面白エピソードをストックしているんだからな。
クリスマスも正月もあってないようなもんだった。今日も律儀にあいつは連絡をしてこない。オレはそれなりに忙しい。利害の一致というやつだ。
それにしたって、毎日吐くほど動き回っていた身体を机に縛り付けておくのはなかなか骨が折れる。一体オレは三月までもつんだろうか。微妙だなと思っている。
つまり今日はコンビニに出掛けて、あとはおでんを食いながら参考書とランデブーをしていた。
きっと明日も明後日も似たようなもんで、そう代わり映えはしないだろう。それでも記録して後から見返してみたら、ほんの少しの些細な出来事を懐かしく思ったりするのかもしれないな。
オレがスーツの男達になんて答えたのかは、まだ妄想中だ。
いつか書くよ。
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