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976.ラストバレル
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20 :
黛千尋
2015/12/07(月) 02:09
晴れ/42
とても静かな日だった。
暖房が稼働する音も、強い風で窓枠がガタつく音も、ホットドリンクを作るためにヤカンに火を入れている音も、蛍光灯が放つ微細な電流音も、参考書の隣でノートが黒く染まり続ける鉛筆の音もしていたが、とても静かだった。オレは一人だった。
一人を好む理由は単純で、人と話すのが好きじゃないからだ。canの話じゃない。wantの話だ。人と話すと疲れる。人と会うのは気力が必要だ。誰かに会いたいなんて気持ちは滅多にいだかない。今はまだ学生だし、ダチと呼べる奴がいたとしても、ほぼ毎日顔を合わせていたからな。これが更に疎遠になって、社会人にでもなれば違うのかもしれないが。
影が薄いことに大して頓着していないのもそれが理由だ。一人だって別に寂しくはなかったからな。
たぶん。
あいつがオレを見つけられたのは、オレが奴に似ていたからだ、と言っていた。あいつが言うんだから、そうなんだろう。
静かな日だ。
思考だけは有機的なはずなのに、どうも無機質に解法だけを求めて稼働している。今のオレに必要なことはそれだけだ。
もう、他のことを求められることはない。
静かな日だ。
過去ばかりが綺麗に見える、最低の日だ。
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