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976.ラストバレル
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32 :
黛千尋
2016/01/19(火) 15:15
曇り/30
企業の面接で、スーツ姿の厳しい顔をした男たちの一人はオレに聞くのだ。「あなたはチームにどう貢献しましたか?」と。
いつかの妄想は一向にはかどらなかった。理由?そんなものただひとつしかない。オレは、あいつの手で作られたシナリオに乗っただけだ。そのオレが、あたかも自分の手柄のようにあの一年間を語ることは、たとえ100人が「構わないだろ」とオレの背中を押してきたとしても、できやしないからだ。
オレは最初から作り笑いなどしていなかった。いつもの無表情で、一言だけ告げて席を立つことになる。
オレは妄想の中で何度も無職決定になってしまうのだった。何度やっても。時折、本当に最初のところまで元に戻って、やり直してみたらいいんじゃないか、というあらぬことまで考え始めるほどだ。つまり、あいつに勧誘されたあの日、一度そうしたように、食い下がられても「断る」と言い放つ選択肢だ。あいつは恐らく、2回目くらいで諦めていただろう。
馬鹿げてるよな。
ライトノベルの主人公のように、向こうからやってくるイベントをあるがままに受け流す生活。それはオレのスタイルだったが、オレが望んでいたことでもなかった。
誘ったのはあいつだ。だが、応えちまったのはオレだ。
オレは今、手をこまねいているんだろうか。
だとして、オレはなにをしたいんだろうか。
スーツの男たちにオレは、オレのことではなく、あいつのことを語りたいと思っていた。
それだけは、わかったさ。
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