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976.ラストバレル
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33 :
黛千尋
2016/01/23(土) 23:38
曇り/29
日記なんぞを書き始めるようになって気がついたが、天気にはあまり種類がない。
晴れ、曇り、雨、雪。雷なんぞ滅多に鳴らないしな。気候の穏やかな日本列島様はありがたくもこんなローテーションを繰り返して穏やかでつまらない日常を演出してくださっている。雹や霙が降ったらオレは喜々として日記に記すんだろうが、未だにそんな気配はない。突風が吹くこともなかったし、極めて平和なお天気模様だ。オレは、空の9割が雲で覆い尽くされていたら曇りと書くことにしている。そう考えると、日照時間はやや少ない一ヶ月だったのかもしれない。
昔、オレは地震よりも風鳴りに怯える子供だった。地面が揺れて電灯がホコリを落としても、棚の上の置物が落ちても平気で絵本を読んでいたが、窓の外で暗雲が渦のように空に立ち込め、高いところから、低いところから、おぞましい楽器のように音と立てる風が窓をガタガタと震わせるのは、どうにも我慢できなかった。あの音は、布団の中に隠れても耳にこびりつくように響いてくる。お気に入りの本を抱えながら、オレは一人で小さく縮こまっていたように思う。
両親は共働きだったからな。そんな夜も、時にはあった。
いつからか、風鳴りもそんなに恐ろしいものではなくなった。
外で聞くと未だにビクビクするけどな。
ものごとは、何でも風化する。いつまでも生々しいものなんて、そんなにありはしない。
天気でさえローテーションしていくんだ。人間の細胞だって、日々入れ替わっていくにつれ、新しいものも古いものも、よくわからずに、同じように見えていながらいつの間にか全く別のものになっている、なんてこともあるのかもしれない。
とはいえ、WCが終わって一ヶ月かそこらだ。
オレたちに向けられたのではないあの歓声は、まだ風鳴りのように耳にこびりついている。
2月がやってくる。
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