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976.ラストバレル
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黛千尋
2016/02/14(日) 02:01
晴れ/21
今年のバレンタインは日曜日に控えているわけで、当然学校中の男子生徒が浮足立つのはその前々日、金曜日だった。
下駄箱やロッカーには悪ふざけの好きな男子生徒からのチョコレート募集の紙が貼られている。もちろん奴らは製菓会社の陰謀によってばらまくように売りまくられている甘くて黒い菓子自体がほしいわけじゃない。それを渡してくれる女子の気持ちと、それを受け取ったモテるオレというステータスを切に切に欲しているのだ。
皮肉かな、求めれば与えられるというものでもない。
授業に出ようと教室に向かう途中、同じように登校なさっている奴を、それはもうきゃいきゃいきゃいきゃいと色めく女性とたちが取り囲んでいた。すごいな。あんなのアニメか漫画かラノベでしか見たことねえよ。
あらかじめ準備していたらしい紙袋に受け取ったチョコレートを詰め込んでいく奴の背中を眺めていた。慇懃に礼を言い、優しい菩薩のような微笑みを浮かべている。女子にとっては申し分ない反応だろう。オレが女子でも記念にと渡したくなるかもしれない。
授業に行く気がなくなって、寮に戻った。
奴が1年かけて築き上げた様付けの立場。容姿端麗衆目美麗、バスケ部主将、生徒会長、日本に五つとない名家中の名家の一人息子。全生徒の憧れの的。改めて並べ立てるとオーバースペックもいいところだ。よくあんな奴と対等に話をしていたものだ、オレ。
オレが女子だったら。
あいつはそもそもオレに話しかけたりは一生しなかっただろう。
がんばれ女子。
名家の一人息子の隣は、ハードルが高いぞ。
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