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976.ラストバレル
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42 :
黛千尋
2016/02/14(日) 02:15
雨/20
朝から雨が降り注いでいた。まるでバレンタインを呪う男たちの涙にも似たそれを、オレは一年校舎の昇降口のガラス張りの扉越しに眺めていた。休日で雨だから、部活動の生徒が時折廊下を通り掛かるくらいなもので、校舎は静まり返っていた。
寮室を抜け出してわざわざ一年校舎までやってきたのは、ただの気まぐれで息抜きで興味本位で好奇心だった。
タイミング良く、女子数人がある男子生徒の下駄箱に群がっているところだった。
明日ちゃんと気づいてくれるかな。部活だから大丈夫っしょ。早く早く。
かくも女子生徒たちはいじましく、慎ましく、大胆で、オレは下駄箱の主が羨ましくないこともない、と思った。
オレは、その女子たちが居るのとは反対側の下駄箱に回って、ある名前を探した。出席番号の最初の方であろう位置にその五文字はあった。幸い(?)そこには不衛生に菓子の類が捩じ込まれている様子は無い。
モテるんだかモテないんだか、わからないやつだ。
オレは紙に印字された名前を指先でなぞった。そんな所作をしてから、割りとそれが気色の悪い行為であると気付いた。
あいつが誰かと付き合うなんてことは恐らく無いだろう。……多分。少なくとも、今すぐにということは。きっと。
いや、わからないな。
もしかしたら、教室の斜め前の席に座る、黒髪ロングの品のある女子生徒を眺めている瞬間なんてものが、あいつにもあるのかもしれない。
思考は取り留めもなく途切れなかったので、オレは溜息を吐いて寮室に戻ることにした。
おいおい。
自分が何をしてるのかわかってるのか?オレ。
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