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976.ラストバレル
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46 :黛千尋
2016/04/30(土) 17:38

晴れ/16

オレは自分が大好きだ。

と言うと誤解されがちだが、別に自分が特別美しいだとか、優れているだとか思っていて、その美点を愛でているわけではない。自分の容姿も能力も性格も、これでも十数年付き合い続けている程度には知悉しているさ。
オレが重要視するのは、自分が気持ちいいかどうか、それだけだ。自分は自分にとって何よりも特別な存在だからな。快適な環境を求めるのは当然だろ。 

だからバスケ部を辞めた。
つまらないからだ。
どれだけ努力しても、結局才能のある奴らに抜かされていく。同学年の奴らにすら追い抜かれ、後輩からも押し上げられる。
スポーツの世界なんて、所詮才能だ。そこに人格なんて関係ないし、才能があれば黙っていても見出される。そもそも才能のある奴だからこそ相応の努力をするんだろ。
跳び箱の五段も飛べないような奴が、大会を目指して勝とうなんて思わないだろ。
時間の無駄だ。

オレには才能がない。
そこそこの年数やってみてそうだったんだ。やってみなけりゃわからない、なんて言わせるつもりもなかった。

それを覆したのは、あいつだった。

オレに才能があったわけじゃない。
ベルトコンベアの前に立たされて、このパーツを組み上げてみろと言われただけだ。
すると、それなりの形になった。
オレに才能があったわけじゃない。頭がいいのは、そのパーツと組み合わせを考えたやつだ。

オレはこの武器があれば、どの大学に進学してもそこそこバスケをやれるだろう。なにせ名門の洛山で5番を張れたんだからな……。

………大学のパンフを眺めながら、そんなことを考えた。

バスケは、やってもいい。
でも、すぐにはやりたくない。

あいつには、一日たりともサボるなと言われた。
一日トレーニングを怠ると、取り戻すのに一週間かかると。なるほど、当時のオレには、そんなロスをしている時間もなかったしな。

バスケをやってもいい。
黒子テツヤの顔が思い浮かぶ。

あいつも、バスケ続けるんだろうな。

あいつは?
続けるんだろうか。いつまで。

知るすべも無い。

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