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976.ラストバレル
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5 :黛千尋
2015/10/14(水) 01:52

曇/57

情熱というのは素晴らしいものだと思う。何かを成し遂げようとする情熱。何かを手に入れようとする情熱。何かに焦がれ続ける情熱。
何せ熱された情なんだから、形にして触れてみることができたんなら、手のひらを火傷したりするんだろう。それがそのうち誇れる勲章になったりな。人生そういうこともあるさ。
あんまり長い前置きをするのはやめておくよ。つまりオレには決定的に情熱というものが足りないということが言いたかった。

常に冷静と言えば聞こえはいいが、どの物語を読んだって、とびきり面白い経験や出会いをするのは、いつだって向こう見ずな奴で、クールに見せかけてもその実熱かったり、お約束ってやつが存在する。何から何まで冷めきって、情熱というお伽話を夢見る庶民には、劇的な出来事も、突拍子もない難題も振りかかってきやしないのだ。

それにしたって寒すぎるんで、オレはまたコンビニのおでんを食い散らかしていた。安価で低カロリー、かつ栄養豊富とくれば、毎日だって摂取してやる所存だ。ついでに今日は半纏を羽織っていたからな、典型的な追い込まれ受験生スタイルの完成だ。いっそ「必勝」と書かれたはちまきでも買ってきてやろうかと思ったが、そういうバラエティグッズが売ってる駅前まで出るのは億劫だったんで想像に留めておいた。窓の外は曇天。スケジュール帳は受験勉強で真っ白。寒さもここに来て極まってくれば、いよいよ憂鬱になるには最適な日和だった。
しかし、この寒さは残念ながらオレを喜ばせる要素の一つになってしまうんだ。先日購入した新品のCPU。こいつの性能を出がらしになるまで試してやるには、天然の冷却ファンは願ったり叶ったりだ(購入費に諭吉が何人オレの財布を巣立っていったかなんて、ここで記録したって悲しくなるだけだから絶対に書かない)。
ほんの数時間の娯楽だ。まあ数時間というのはオレが張り付いている時間のことで、実際にはMent/estとかなんやら、いろいろしてるんだけど。

これは情熱だろうか。多分違うな。冷却温度と発熱温度の狭間で少し考えていた。そんなタイトルの小説もあった気がするな。

ではあいつの勝利への執念は、果たして情熱だったろうか。オレの肩に手を置いて向けた勝利のための言葉は。人を人とも思わぬ扱いをしてても叶えるべき義務は。

やっぱり違うな。
情熱が、手にとって見えるものだったら良かったのにな。
オレは珍しく感傷的になってしまった。
ドライアイスでも火傷をするっていうのに。

CPUの周波数は新記録をベンチしていた。

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