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976.ラストバレル
 ┗7

7 :黛千尋
2015/10/18(日) 03:47

晴れ/55

他人との会話の中で自慢話や愚痴ほどつまらないものもないが、最も聞くに値しないのは夢の話だろう。「今日変な夢見てさ」から始まるところからして無意味さが充満している。だってそうだろう。現実に起きていない超個人的な脳の情報処理の一過程でしかない曖昧模糊として意味がないと最初からわかっている他人のそれを聞かされるのだ。まだ今日のお天気について話したほうが情報としては圧倒的価値があるだろう。特にオレのように天気予報を見るなんて面倒なことができずに、午後から雨の予報があるっていうのに傘を忘れたりするタイプの人間にとってはな。

まあけど、これは日記なわけでそもそも書き綴っていること自体がなんの面白みもないしょうもないオレの日常だ。今更つまらない話題の一つや二つ追加したところで構うまい。

そんなわけだ。今朝は変な夢を見た。

オレは一人っ子なんだが、夢の中ではなぜだか妹がいた。誤解なきように言っておくがオレは妹属性ならなんでもかんでも好きなわけじゃなくて、あくまで兄を尊敬し兄を唯一無二の存在として慕い、かつ妹自身が大人しめで貞淑な感じだと大変ストライクだというだけだ。で、その妹なんだが、オレに似ているのかといえばそんなことはちっともなく、睫毛の長い勝ち気そうなでかい目とか(なんかついでにオッドアイだった)、ツンツンした赤いショートヘアとか、個々のパーツが恐ろしく整ったツラとか、少し低めのまろみのある声とか、なんかとにかく全然オレと遺伝子を分け合った感はゼロな妹だった。まるで二次元から出てきたような超然とした雰囲気で、オレが把握していた設定上、その妹は眉目秀麗成績優秀、スポーツ万能という三大要素もクリアしていた。

というか。
この時点でオレは夢の中でメタ的視点を獲得しており、つまり「あ、コレ夢だ…」と知ったうえで夢を見ており、この突拍子もない妹設定が昨日読んだラノベの引用ではなく、残念ながらつい先日までオレの一番身近にいたクソ生意気な後輩をモデルにして構築されたことを重々承知していた。夢の中のオレは、呑気に「じゃあ血の繋がらない義理の妹設定でいいか」などと考えてしまっていたわけだが。

夢にはなんの意味もないと前述したが、それは他人にとっての話であって、夢を見ている本人にとってはそれはそれは重要なメタファーや警告を孕んでいることが間々あると、「大体全部父への憎しみとエロスだから」と夢を大雑把に片付けた学者によって世界中に認識されている。そしてそれは、オレもそれなりに信仰している考え方だ。何せ初披露となる試合前は、緊張でバスに乗り遅れる夢を見たからな。

じゃあこの夢は一体何を意味しているんだろうか。
夢の中の妹(仮名:征子)は、「兄さん、早く勉強しないと志望校に落ちてしまいますよ」などとネトゲにかまけるオレを叱咤激励したりしていたわけだが、おかげで受験から逃避したい願望という可能性が生じて、この征子の存在の意味が判別しづらくなってしまっていた。
征子は控えめに言ってちょっと口うるさかったし兄を敬っているようで尊大そうな口ぶりが癪に障ったが、あえて控えめに言うととんでもなくオレ好みでかわいかった。なぜ。その意味は。

考えていたわけだが。正直もういいじゃないか、むしろこんな夢の意味を追求することこそが無意味さの骨頂足り得る可能性もあるわけだと思わんでもない。大先生も言っているとおりだ。夢には大体父への憎しみとエロスしかないのだと。馬鹿野郎なんて結論を出してくれやがった。

オレは別に宇宙空間を永遠に漂うような絶望を感じたわけじゃなかったが、考えるのをやめた。

その時だ。

滅多に鳴らない携帯が着信音を響かせ、ディスプレイには見間違いでなければ赤なんとかとか表示されていて、オレは肝を冷やすことになるのだった。
メールで綴られた用件は死ぬほどどうでもいいことだったわけだが、まあそのことは、明日か明後日か、そのへんにでも書くことになるよ。

起きただけなのにつかれた一日だった。

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