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976.ラストバレル
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8 :
黛千尋
2015/10/22(木) 12:50
曇/54
卒業するまで放っておいてくれというオレの願いを律儀に全うしていたクソ生意気な後輩クンが、禁忌を破ってオレにメールをしてきたのは何の事はないとんでもなくしょうもない愚にもつかないような用件だったし、取り立ててこんなことを日記に書いたところでしょうもなさすぎて後々読み返したところで「おいおいくだらないにも程があるだろ」という内容になるのは目に見えていたんで省略してしまおうかとも思ったんだが、それはそれでその葛藤自体が拘泥しているように見えて段々と腹が立ってきたのも事実であって、いやもういいよ何もこだわっちゃいないんだ本当に。
オレは部室に忘れ物をしていた。
WCがあるっていうんで、バスケ部の大掃除は例年年明けに行われる。なるほどな、そこで引退した3年生のロッカー周りを改めて整理整頓してみたら、いろいろと残留物が出てきたというわけだ。つまりオレに限った話じゃない連絡だったんだが、一応洛山の一軍でレギュラーを張ってしまった経緯上、ご丁寧にも主将自ら引取に来るか不要であれば処分の許可をとお伝えくださったらしい。
律儀なことだよな。いや、ラノベの某シリーズの第3巻は一体どこに行ったのかと探してはいたんだが。
どうせ大学に入ったら引き払う予定にしている室内を眺めてみても、もういいじゃないかないかという気分になってくる。今オレはバスケ部にとってはOBではあれ部外者であって、特にオレは引退式にも出なかった不忠モノである。(征ちゃんのスピーチを聞き逃すなんてバカねえあなた、なんて実渕にこないだ学内ですれ違いざまに言われたが、生憎お坊ちゃんの完全無比で愉快なスピーチなんぞにはこれっぽっちも興味がない)それにうっかり部室に行って他の3年生と出くわすのも嫌だったしな。
結論から言うと、結局オレは部室に行ったわけなんだが。
オレはご丁寧に「3年生引き取り物」と書かれた箱の中にいっしょくたに納められていたラノベを無事手元に戻し、今度こそ本当にもう何の用事もなくなった部室を見渡した。引退式の日、お坊ちゃんにも伝えたが、別にここになんのステキな思い出もない。
だというのに、変に歩みを鈍らせてのんびりしていたのが悪かった。聞き慣れた声がオレの名前を呼んだ。いや、正確には苗字だな。しかもさん付けで。慣れなくて相変わらずぞわぞわする。
中身の無い社交辞令的な挨拶を交わして、オレは部室を後にした。あばよ部室。もう二度と来ることはあるまい。いや、来るものか。
また苗字を呼ばれる。なんなんだよ。後輩が告げた一言は、オレがつい数秒前にした決断を覆せというものだった。いやだね。にべ無く断って帰宅した。
あいつの顔は見なかった。オレはリスクは犯さない主義だからな。
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