> 御前不足だ、餓えた。
そう言いながら俺に触れる、
逞しく長い指と広い掌の温度に、
接触した其処から、
躯が簡単に熱を持つ。広がる。
自分の躯なのに、
自分では無いような、錯覚。
翻弄される、熱。
御前にかつえていたのは、
求めてやまなかったのは、俺の方だ。
余裕振りたい、
寛容に彼を待ちたい、
そんな理想の自分に反して、
淋しさに悄気る本心。
隠しきれなかった、本音。
其れが彼を喜ばせるのか、
追い詰めるのか。
何処まで我が儘を、
自我を押し通しても良いのか。
未だ、彼との距離感が、
測れずにいる。
大切だからこそ、
失いたくないからこそ、
嫌われたくない。
重りになりたくない。
# 臆病になる自分が、情けない。
…謝罪が相応しいかなんて、
彼奴なら絶対に、
否定してくれると分かっていながら、
其れを期待して紡ぐ謝罪なんて、
要らなかったのに。
ネガティブが顔を出す。
強がりで、
他者の顔色を気にし過ぎる俺の、
悪い癖。
# 御前が堪らなく好きなんだ。
其れだけは、
伝わっていれば良い。