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477.【妄想の】二つ名キャラで小説を書こうぜ【暴走】
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◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/03/18 16:22:53 ???
いつものように彼女と街を歩いていた時、たまたま新しくできた服屋を目にした。俺自身は、特に着てみたいというものはなかったのだが、ふとショーウインドーでマネキンが着ている服に目が吸い寄せられ、立ち止まってしまった。
「ん、どうしたの? 可愛い店員さんでもいた?」
歩みを止めた俺に、彼女──クシーが、冗談混じりに囁く。いや、と首を横に振って、俺は目が止まった服を指さした。
「あれ、いいなと思って」
そう言うと、何故かクシーは嘆かわしいと言わんばかりに空を仰いだ。
「ああ……まさかマネキンに負ける日が来るなんて……」
「違うわ!」
「……女装癖なんてあったの?」
「それも断じて違う!」
なんで普通の思考ができないんだおまえは!
……俺は深呼吸して気を落ち着かせてから、彼女に説明した。
「おまえ、いつも衛生服ばかりだろ。たまには違う服とか来てみたらどうだ?」
んー、とクシーは少し考える。
「急患とかあった時、いちいち着替えてる暇ないでしょ。そりゃ衛生的には白の方が、病院に保管してるから清潔なんだけど、普段着にしてる桃色の方も毎日洗濯してるから、めちゃくちゃ汚れてるってわけじゃないし。それに、街で事故ったり倒れてる人のところに駆けつけたら、この服で衛生兵ってすぐわかってもらえて、それだけで安心してもらえる、ってのもあるのよ」
……なるほど、衛生兵としての意識の高さから来てるのか。なら、文句は言えないな。
ただ、少し残念だ、という俺の気持ちがそのまま表情に出てしまったのか、クシーは俺の顔を見てくすりと笑った。
「そんなに見たかった? あたしあの服着てるとこ」
「うん。だって似合うだろ、絶対」
俺がそう答えると、何故かクシーは固まってしまった。
「……? どうした、クシー?」
「あ、あなた……」
顔を真っ赤に火照らせた彼女は、ようやく言葉を絞り出す。だが、そこから先は立て板に水の如くだった。
「そんな台詞恥ずかしげもなくよくいけしゃあしゃあと言えるわね!? なんでそんなことさらっと言えるのよ聞いてるあたしが恥ずかしいわ! もしかして他の女の子にも言ってんじゃないでしょうね口説いてないでしょうねこの女たらしーっ!」
「え、えぇー……」
……褒めたつもりなのに、何故俺はここまでボロカスに言われなければならないんだろうか……
というか、この状況からの回復方法が思いつかない……
うーとかあーとか言いながら俺がまごついていると、クシーは口を閉じてふんっとそっぽを向いた。
「もういいわ、あなたがあたしにでれでれってことはよくわかりました! ええよくわかりましたとも!」
「……すみませんでした」
「なんで謝るのよ!」
なんでっておまえ……どう聞いても怒ってるようにしか聞こえなかったから……
しかし、一層怒ったような表情になって、彼女は俺の左腕に自分の右腕を絡める。いや、絡めると言うより最早締め上げるの方が近い。血が止まりそう。
「そこまで何か買ってくれたいんだったら、『メイズ』の鞄を買ってくれるといいわ! 鞄も服装の一部みたいなものだから問題ないし! あそこの鞄、耐久性高いし機能的みたいだし!」
「わかったわかった、買ってやるから落ち着け」
『メイズ』は確かブランド物で、値が張る品ばかりだったはずだ。……が、まあ、いいだろう。よく考えたら、付き合い始めてから食事を奢るとかはともかく、何か品物を買ってやるということはしていなかったのだ。これくらいはしてやらないとな。
クシーはむすっとしたまま、俺の腕をぐいぐい引っ張る。その頬にはまだ赤みが差していた。そんな彼女がなんだか可愛くて、俺は少し笑って彼女と歩調を合わせた。
【了】
(202.229.178.1)
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