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477.【妄想の】二つ名キャラで小説を書こうぜ【暴走】
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59 :◆Nq5PNg/rCw
投稿日:11/02/27 12:10:59 bb1wr/kpO




  ──青年は、どう、と倒れた。上半身にはぽっかりと大きな穴が穿たれ、夥しい量の血液が、みるみるうちに地に広がって行く。彼の身体を喰い破った龍は、その抉り取った部分を咀嚼していた。龍が一噛みするごとに、口から溢れた血が飛び散り、滴る。青年の死に様も龍の食事風景もおぞましいものだったが、深淵検死官は見慣れたものと動じることはなかった。
  そう──彼の秀眉を僅かに寄らせていた原因は、それら死のむごさを想起させるものたちではなかった。
  だいたい、龍も傷も幻なのだ。しばらくすれば消え失せる。……受けた痛みと恐怖は、青年の脳裏にしっかりと刻まれたはずだが。
  いや、恐怖は果たして刻まれたのだろうか? 「死に慣れている」とうそぶいた彼は、死が飛び込んでくる際にも表情一つ変えなかった。鍛え抜かれた軍人でさえも、やはり恐怖を見せるか自棄になるか──なにかしらリアクションがあった。あのように平然としていた様は、見たことがないのだ。
(正直なところ──それほど面白くはありませんでしたね)
  はぁ、と深淵検死官はため息をつく。この能力の使用において、ターゲットの死への恐怖を観覧しながら愉悦に浸るのが彼の道楽だ。これではあまり、道楽としての意味を成していなかった。

(124.146.175.232)
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