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477.【妄想の】二つ名キャラで小説を書こうぜ【暴走】
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65 :鈴の小道3/9◆vLYx.hjvdE
投稿日:11/03/01 14:37:36 ???


「おい、お嬢ちゃん、家出か?」
少女はまさに驚愕、といった様子で目を見開いた。まあこんな時間のこんな場所だ、お互い人がいるとは思っていなかった。とりあえず思い付いたから「家出か」と言ってみたが、荷物は少なく、家出できるほどではない。それでは、と俺が口を開くより早く少女が言葉を発した。
「それ…」
「ん?」
少女は俺のポケットを指差している。ああ、鈴でパンパンになっていたのだった。
「あ、これもしかしてお前さんのか?」
鈴を取り出して彼女に見せると、そのまま固まってしまった。傷をつけてしまったか、と鈴を確認したが、特に傷は見あたらない。
「…置いて」
「へ?」
唇が震えている。何かを喋ったようだが、どうも聞き取りにくい。彼女は大きく息を吸った。
「それは、置いて、おいた、の」
「おいておいた?」
尻すぼみだったが何とか聞こえた。それ、とは鈴のことだろう。鈴を置いておいた、ということは、なるほどつまり。
「…拾っちゃ、駄目だった…か?」
「…」
怒りをこめた目で睨んでくる。女房の言ったことは正しい。俺の親切は大きなお世話なのだ。これは特殊なケースだが、何かを拾うときはまず誰かを探して聞いてからにすべきだと心に刻む。
そういえば独身の時(今も独身であるが)、何人かと付き合ったが、別れを切り出すのはいつも彼女からだった。そして皆決まって「私の気持ちを全然わかってくれない」と言って去っていく。その度俺は次こそは、と意気込むのだが、どうも俺の思考はズレていて、全てが裏目に出るらしい。伴侶に愛想を尽かされるのならば相当だ。もう誰かに相談した方がいいのかもしれない。
「悪かった。落とし物かと思ってな。元の場所に…」
「いい。私が置かない、と、駄目だから…」
「…すまん」
「…」
今、俺も自分と離婚したい気持ちでいっぱいだった。

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