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2746.Oscuridad
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32 :ウルキオラ・シファー
2010/10/24(日)20:20:53






微睡んでいる間、前触れ無く記憶の断片が浮上してくる事がある。

其れは浮上と表現するに相応しく、予測不能な無意識の海流に煽られて水面近く迄浮かび上がって来たかと思えば、掬い上げ様と差し延べた指先を掠め再び底無しの深海へと沈み往く。

だが、稀に欠片程度は掌に残っている事もあるようだ。









現世の南方。

月明かりに黒々と照らされる海原。
月没というものも存在するのだと其の地で初めて視認した。


古びた白亜の建造物。
左右に等間隔で並ぶ幾つもの長椅子。
奥へと真直ぐに伸びる毛氈の先、正面には十字架。


人間は老婆一人だったが、其奴には俺の姿が視えたらしい。

毛氈の上を歩を進め傍らに立つ俺を、長椅子に掛けた儘瞼を開け顔を上げて見据えた途端。
双眸を見開き息を吸い込み、直ぐに瞼をきつく閉ざし十字架を模した首飾りを握り締めた儘、口の中で盛んに何かを呟いていた。

文字を持たぬ、古来の言語。
土着の言葉らしい。







お前は黒。
大地を包む夜の闇。
其処では物は形を成さぬ。
無形からあらゆる物が生まれ、
何も無いと同時に全てが存在する虚無の空間。







額に汗を浮かべ怯えから歯を鳴らし、圧を抑えているとはいえど魂魄を押し潰されそうになりながらも老婆は言葉を振り絞った。







お前が何者かは教えられるが、お前が欲しいものは与えられぬ。

此処から立ち去れ、悪魔め。





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「…下らん。塵が俺に指図するな。貴様の魂魄など要らん。」










魂魄に用など無かったのは事実だ。



だが、あの人間が言わんとしていたのは別の事柄だったのだと。

今なら漸く理解出来る。




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