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2746.Oscuridad
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40 :
ウルキオラ・シファー
2010/11/12(金)19:39:35
人間というものは、車窓から望む景色を良く眺めて居るものだ。
落日の後は殊更に。
取り留め無く、唯茫洋と。
其の真似事を試みる様になったのは、其処から視る外の世界には、視覚を惹き付ける何かが在るのだろうかと。
純粋に疑問と興味が湧いたからだ。
前方から後方へと流れていく、四角く切り取られた景色。
見知らぬ、或いは見慣れた其れ等。
何かを生産する為に忙しなく駆動する場所、其処で立ち働く者や、其の日の任を終え立ち去らんとする者、宵の帳と共に任へ赴く者。
一家団欒の風景とやらを、窓硝子一枚隔てたのみで無防備に晒す者達。
生きる者の営みが、其の儘光源として視て取れる。
ヒトは孤独だ。
視る事も触れる事も叶わぬ内面を抱え持て余し、自らでさえ酷く曖昧で捉え処の無い其れを、如何して他者に在りの儘伝え切る事など出来るだろう。
況してや伝える手段さえ、言語という尚更曖昧なものに頼るしか無いというのに。
地上にばら撒かれた光源。
其の儚さ、鮮やかさ。
其の一つ一つが、自らと等しく孤独。
普段は自覚する事も意識する事も薄かろう其の現実を、其の輪郭を、視覚を以て辿る事が出来る様に感じられるからなのだろう。
其れすらも曖昧、所詮は錯覚に過ぎぬと理解していようとも、恐らくは其れで充分なのだ。
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