Yahoo!ショッピング

綴一覧
3103.呵々大笑
 ┗30

30 :ノイトラ・ジルガ
2012/05/13(日)00:00:17

俺が翳すのは絶望。
為ら傍らに付き従う御前は
一体何を引き摺って歩むのか。

>生誕唄。【薄縹色(#507ea4)】

砂を食んで、
血を歩む。

遥か遥か、気が遠くなる位ぇ昔の噺。

虚孔は未だ隠して被うものが無く
背中にゃァ昆虫染みた硝子翅。
痩躯に白亜の頭蓋片を纏い、
常々血漿に塗る蟲節六腕で漆黒い空を掻いて居た頃から少し離れた位置に気弱そうな牙の生えた巨獣と四本脚の羚羊。
其れが俺は煩わしくて、隙が有れば頭から喰うつもりで居た。


羚羊は俺の後を歩む癖に矢鱈と強い素振りを見せた。
決して力を笠に着る事ァねぇが、逆に其れが俺には腹立たしかった。
牙のある巨獣は俺より遥かに弱かったが俺の行き先に必ず必死で着いてきた。

そうして何時か頭蓋の名残は一部だけに為り、俺の腕は歪んだ鎌の色をした大きく黒い刀に為った。
其れでも変わらずと俺の傍らには羚羊のアイツと巨獣だった御前。
───罵声を向ける、暴力と振るう。
殺すつもりで。

何時だったかふと俺と距離を置いた羚羊に御前は場所を埋めるように歩みを詰めた事が在る。
直ぐぶん殴ってやったが、悲観に呉れるでも無く惟ただ傍に居た事を隻眼に記憶えてる。


着かず、離れず傍に居て。
俺のひとつ狭い視界、其の後ろに必ず必ずついて歩いた。

何が愉しいのか、とも訊いたことがあるが其処が居場所なんだと訳の理解らねェ応えしか返っちゃ来なかった。






あの日。

俺の刀たる腕がひとつ。
翡翠に手折られる瞬間。
初めて内側に疵を受けた時にも御前は傍に居た。
喪失った俺とは逆の隻眼に、折れる刀を初めて見せた。
御前の存在を月下明瞭にした初夜でも有る。
其れでも御前の場所は変わらずに。
惟一度だって祝ってやる事が無かったこの日に向ける聲はきっと規格外。

祝う辭は御前だけに、労いなんぞ必要無かろうが一晩位ぇは呉れてやっても好い。


屍色の花道に、吊れて逝くのは
ひとつきりの薄縹。



>岐路手繰る先。
>蟲翅透ける其の道が赤婀娜花の地獄とて、
>懼れず留まる事莫れ。
>憂うる事も悼む事も有りはすまい。
>此の先屍の花道は酒池肉林の絶望酒宴、

>謳え今宵の晩餐は、捥いだ絶望活け造り。

[返信][削除][編集]



[戻る][設定][支配人の部屋]
WHOCARES.JP