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1878.PATH
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山田三郎
2020/10/26(月) 15:43
依頼のための調査だと嘯いてアイツを連れ出すことに成功した。
一兄から任された依頼の一環でとあるデータ収集が必要になったんだけど、受け渡しがPC上で完結しなくって、指定されたクラブに行って直接受け取らないといけないって話になって。
でも、勿論ネット上の遣り取りじゃ年齢を大幅に詐称してるから、僕ひとりで出向くわけには行かない。だから、お前にこんなことを頼むのは本当に癪なんだけど他に頼れる相手がいなくって、その、指定された場所までの付き添いを頼みたい。
──という経緯で毒島をイケブクロまで連れ出した。
勿論目立っちゃ困るから出来るだけラフな格好で来るよう伝えて、駅前で待ち合わせして、イケブクロ駅西口(北)で落ち合って。
本当にラフな格好で来たから正直ビックリしちゃって最初の5分くらいはまともに喋れなかったんだけど……だっていつもと雰囲気が全然違ったし、普段眼鏡を掛けてない奴が眼鏡を掛けて、しかも髪型まで変えてくるなんて不意打ちにも程があるっていうか……だって、そうだろ? 反則だろ? ちょっと挙動不審になるのも仕方ないだろ? 僕は悪くない。ってことでいつもと違う雰囲気の毒島を連れて指定の場所へ向かったってわけ。
時間はもちろん夜だよ、西口のお店はほとんどが夜間営業だからね。
僕にとっては慣れ親しんだ喧騒だけど、まあ、未成年が夜中にフラフラ出歩くような街じゃない。クラスの女子が来たいって言ったら陽の明るいうちじゃないと危ないよって忠告するレベル。
そういうディープなイケブクロの一角に毒島を連れ込んで、指定のクラブに向かったんだ。
クラブってだけで僕は門前払いされるから当然入ったことは無かったんだけど、毒島に先に入ってもらったら恐ろしくあっさり中へ入れたからちょっと拍子抜けした。
僕も一応変装してたし、ほら、ブクロじゃ有名人だから。そのせいで足許が見えづらいし人が多くて歩きづらいし酒臭いしなんか盛り上がってる頭の悪そうな奴らばっかりだし鬱陶しいしほんとに最悪だったんだけど、幸いにも周りより背が高い毒島が先導してくれたおかげで何とか店のどん詰まりにあったロッカーまで辿り着いて、保管されてたUSBを回収できた。
途中で何度か人にぶつかって、そのたびに毒島が珍しく相手にガン飛ばしてて面倒そうなお兄さんたちを追い払ってたから、後で聞いてみたら実は人混みがあまり得意じゃないってことだった。
それは悪い事したなって思って謝ったんだけど、貴殿の役に立てたなら良い、とか何とか格好良いこと言っちゃって。
線路沿いの人気のない辺りまで来て一息ついてからそんなことを言うから、何ていうか、正直、何も言えないなって思ったんだ。
実はデータの受け渡し場所をネット上じゃなくてリアルのお店に指定したのは僕のほうで、最初から口実を作ってコイツを連れ出してあわよくばデート気分を味わいたいなって思惑があったことは、多分話すと凄く呆れられるだろうからそっと胸に仕舞っておくことにした。
また子供っぽいって言われるのは嫌だし。
次の日に予定があるからって帰ろうとした毒島を駄々捏ねて引き止めなかっただけ理性的だって自分を褒めたいくらいだ。
とにかく、僕の目論見はこの日はこれで終わり。手も繋げなかったし、短い時間しか一緒に居られなかったし。でも普段と違うラフな格好のアイツと一緒に過ごせたのはすごく楽しかったし、ワクワクしたから、これはこれで満足。
……あ、でももう一つ特筆すべき重大事項があったんだ。
駅まで送るって言ったけど断られて、まぁ駅は目と鼻の先だったからそんなのどっちでも良いんだけど、歩き出した毒島がちょっと離れたところで振り返ったんだよね。
眼鏡のフレームがネオンの光に反射して表情はよく見えなかった。でも、アイツが笑って長袖の上着の懐から何か取り出して、「いつ取りに来るんだ?」とか何とか言ってまた懐に仕舞ったのが分かった。
分かるだろ? ずっと探してた僕の通帳だよ。
見つからないはずだ、アイツ、ずっと肌身離さず持ってたんだから。
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