あけましておめでとうございます、今年もよろしく。

向こうが忙しいみたいで、なかなか遣り取り出来ていないのが日記をサボってた一因ではある。
これは本当に僕個人のスタンスなんだけど、だってさ。日々日記を書くにしたって「寂しい」「会いたい」「もっと話したい」なんて女々しいフレーズばっか並べ立てるのってスマートじゃないだろ。
だから別の作業をしたりゲームに没頭したりして……そうこうしてる間に年が明けちゃった。今年もよろしくお願いします。ペースは緩やかだけど、まだゲームを続けてるよ。


という訳で、すっぽかしてた誕生日とクリスマスのことを少しでも書き記しておこう。

当日は一兄と二郎が祝ってくれて、今年はホールケーキまで買ってもらった。いつものケーキ屋さんの好意でプレートが「さぶちゃん」になってたのは納得いかないけど、まぁ、美味しかったから良しとするよ。
毒島は……何か仰々しいものをプレゼントしようとしてたんだけど、僕から何も返せないし。ほら、まだ未成年だしちゃんと恋人になったわけでもないしそういう重いのは相手によって好悪分かれるってネットにもあったから……色々考えて、時間が欲しいって答えたんだ。アイツの時間。一緒に居られる時間。一緒にゲームができる時間。ささやかで健気で泣けてくるだろ？　完璧な良い子を演じられてるんだよ、僕。
という訳で当日の深夜にデートしました。いや付き合ってないからデートじゃない。遊んだ。


そしてクリスマスの話。
一兄は過去何度か僕らに欲しいものを確認しないでプレゼントをして失敗したことを気に病んでたのか、今年は何度も念押しして来てた。といっても、今一番欲しいのはレノボのハイエンドゲーミング用PCなんだけど流石に30万するものを一兄にはねだれないから無難に新しいキーボードが欲しいって伝えておいたんだ。そうしたら、何だかメチャクチャカッコいいタイプライター調のキーボードをくれたから一兄の事が世界で一番好きになった。まぁ元からダントツで世界一なんだけどね。

ちなみに一兄には僕と二郎で協力してデスクワーク用の座椅子をプレゼントしました。最近事務所の中での仕事も増えたからね。マッサージ機能が付いてることを説明したら一兄が暫く座椅子から動かなくなった。安らかな寝顔をしてたから気に入ってくれたんだと思う。


それから、毒島へのプレゼントも凄く頭を捻ったよ。
山の中は寒いだろうからちょっと良いブランドのマフラーを選んで贈ったんだけど、後日テントを覗いたら別のハイブランドのコートと手袋が並んでて「左馬刻と銃兎に貰った」とか言うから、なるほど考えることは皆一緒なんだな、ってしみじみした。あのテント、絶対雪を越せないからな。確実に凍えて死ぬからな。せめて防寒具だけでもと思って贈ったんだろうな。分かるよ。
幸いにもマフラーってチョイスは被らなかったみたいで、贈り物を全部身につけた毒島はギンザ辺りを歩いててもおかしくないハイブランド防寒具オシャレ男になった。背の高い男は何を着ても似合うのが癪だ。
ちなみに毒島からは新しいキーボードを貰いました。うん、一兄からのプレゼントと見事に被った。でも良いんだよ、キーボードなんていくらあったって困ることはないから。

あと書くこと……あ、そうだ！
キスをした！キスする仲になった！　………と思う！　いや、恋人とかそういうアレじゃないけど……多分……

ハッピーバースデー、僕！

気付いたらとっくに12月に突入してた上に僕の誕生日じゃないか！

毒島とのあれこれを色々書き溜めちゃってるから、折を見て記録しに来るよ。つつがなくゲームしたり雑談したり騙し合ったりしてるから、また改めて！

イカサマポーカーの話

トランプを使ったゲームは好きだけど、ポーカーは好きじゃない。手元に来るカードが完全にランダム、運の要素ばかりで頭を捻る余地がないからだ。
同じ理由で麻雀も花札も大富豪も嫌いだ。運の要素が大き過ぎる。せめてUNOくらい戦略を立てられるなら良いけど、アトランダムなカードの引きで勝敗が決まるのは不本意極まりない。
この点は毒島も僕と同じで、完全なギャンブル要素のゲームは好まない。この辺りの好みが似てるから僕らはゲームで長く遊ぶ事が出来るんだと思う。
その毒島がポーカーを持ちかけてきた時には訝しんだけど、すぐに理由が分かった。出したカードがイカサマ用の細工がされたカードだったんだ。

たまにここへ来るシブヤのギャンブラーに貰ったらしいこのカードには細工がしてある。明かりに透かすとカードの一部分が透けて裏面が見えるんだ。
だから、ちょっと身を屈めて覗き込むと相手の持ってるカードが把握できるってわけ。……まあ、カードの引き自体が運任せなのは変わらないから戦略を立てるほどのゲームにはならないんだけどね。退屈な運任せのゲームが少しは面白くなるだろ？


ルールは簡単、山からお互いに5枚引いて、1回だけ手札をチェンジ出来る。友人同士のお遊び用ルールだよ。あっさり終わった勝負だったけど軌跡はここにしっかり記しておくべきだろう。
まず、毒島が引いた5枚のうち4枚まではランタンの頼りない光に透かして確認できた。残りの1枚は光の加減でよく見えなかったけど。

スペードのＡ，Ｋ，Ｑ，10。

そう、あと一枚でロイヤルストレートフラッシュが出来る手札だ。

向こうの用意したカードの山は一度もシャッフルされてない。案の定毒島は、チェンジはしない、と。
つまりこの場は毒島の独壇場だ。僕に出来ることといったら、手元にあるカードをチェンジして、不自然に揃ったハート・スペード・クローバー・ダイヤの9。この4枚をわざと持ち上げて透かすくらいだった。
ランタンの明かりに透けてるはずのフォーカードを見せても、向こうはポーカーフェイスを崩さない。つまり勝てない。向こうの手が完璧に揃っているなら。この期に及んでもカードのチェンジをしないなら、つまり、きっと。


それでも勝負を降りるのは山田家の性分じゃない。


だって負けたら毒島を脱がせなくなるし、じゃなくて通帳を奪い返すチャンスを逸してしまうから。
後に退けない。仕方ない。向こうの提示したルールを呑んだんだ。これが駆け引きだ。目を瞑ってフォーカードを床に叩きつけた。同時に、向こうのカードも目の前に広げられた。

毒島のカードは、スペードのＡ，Ｋ，Ｑ，10、3。

そう、ブタ。
呆気に取られてカードと向こうの顔を見比べる僕を眺めて、毒島はちょっとだけポーカーフェイスを崩した。

最初から負ける気だったのか、コイツ？
僕の初体験。試合に勝って勝負に負けた。
嬉しいような悔しいような、そんなむず痒い感じだった。本当にコイツのことは許さない。まだ許してない。イカサマの出来るポーカーを使ってブタって何だ。あり得ない。絶対ふざけてる。
そう言ったら「フェアに再戦するか？」って言われたからキッチリ断りました。それとこれとは話が別です。勝ちは勝ちなので。


という訳で、僕は晴れて毒島と一泊することになった。
今から楽しみで仕方ない。早速計画を立てないと。綿密で一箇所も欠けていない、完璧な計画をね。

お風呂に誘った結果の話


二郎のアドバイスを聞いて最初は凄く躊躇ったんだけど、だってほら、なんて言うか、付き合ってもいないのにいきなり裸を見るのは刺激が強過ぎるだろ？　認めたくないけどシブヤの坂の上ってのが何かすぐに理解出来なかった程度には知識も経験も絶対的に不足してるんだよ。大河＿の＿一滴（桑＿田）そのものじゃないか。へぇ二郎って結構進んでるんだとか思ってドキドキしたりしてないからな。全然してない。
また話が逸れた。つまりもっと段階を踏んで裸に辿り着きたい願望はあったけど、まぁとにかく熟慮を重ねた結果、他に良い案も思いつかないから意を決してお風呂に誘うミッションを実行することにしたんだよ。


結果、秒で断られた。


まず水浴びはこの時期僕が風邪を引くから駄目。間違いなく子供扱いされてるけど流石に僕もこの時期に風邪なんて引きたくないから大人しくしたがった。
で、お風呂は「一緒にお風呂に入るってのはどう？」って短い台詞の間に僕が3回も噛んだから駄目、とのことでした。レクイエム……僕が僕を葬る……

一晩考えてやっと意を決したのに秒で却下された僕の気持ちだよ。
流石にないだろってことで軽く食い下がってみたら、全く別の方向からとんでもない攻撃を食らった。
曰く、この場（ベースキャンプ）に二人で入れる大きさのお風呂を用意は出来ないけど、麓へ降りて一緒に銭湯や温泉に浸かるくらいなら良い、って。

それは予想してなかった。
完全に反応が遅れた。

多分その時の僕はいつもの数倍要領を得ない喋り方になってたと思う。今思い返してもちょっと正気の思考じゃない。
とにかく色々確認したよ。麓ってハマの繁華街？　場所っていうか場所は僕が選んでいいの？　その日は日帰り？それとも泊まり？※最重要
結構な剣幕で質問したら一応ちゃんと全部答えてくれて、かなり破格の条件で諸々決定した。

場所は互いに協議してフェアな舞台を選ぶこと。
目的地に着いても入浴しない、全く脱がない等、相手に隙を与えないような肩透かしをしないこと。付随して、タトゥー等の事情で入浴を断られる事態に陥らないよう下調べを徹底すること。
従来のルール通り暴力などの強引な手段は不可、法律を侵さないこと。
必要があれば一泊すること。（つまり僕は一兄に外泊許可を取る）※最重要

見ての通り、かなり僕に優位な条件だ。
僕の所持している鍵は依然として自宅の部屋に保管してある。対して、毒島の持つ通帳は変わらず携帯してもらう。
実はその日だけベースキャンプに置いてきました、なんて肩透かしはしないと言質を取った。平気でやりそうだからな。
加えて一泊するとなると無防備な時間が格段に増える。夜更かしの得意な僕にとって、丑の刻は独壇場だ。
僕が余程のミスをしない限りゲームセットに持ち込める。
良いのかとしつこく聞く僕に、毒島は相変わらず何を考えてるか分からないポーカーフェイスできっちり答えてくれた。


ただし、今からやるゲームで勝ったら、だと。


当然だよね、僕らはゲームをする為にこうして逢瀬を重ねてるんだから。

どうしようもない話をひとつ。

ここのところ日記を書こうと思って書いては消し書いては消しを繰り返してるんだよ。
今までみたいに洒落たテーマで良い感じの文章をしたためようと思っても、今正直何も思い浮かばないんだよね。
ダメなんだよ。この前アイツがほら、懐に僕の通帳を忍ばせてるのを見た時からずっとだよ。

もう、アイツをどうやって脱がすかしか考えてない。

だってそうだろ？　どう考えてもアイツが悪いだろ？　なんで胸元に仕舞ってるんだ？　おかしいだろ？
最初に隠し場所を検討したとき『肌身離さず持ち歩いてる可能性は落とすリスクが高いからまず無いだろうフフン』ってドヤ顔で堂々と書いてた僕の気持ちを察してくれる？

疑問その１、懐に入れてる事に僕がどんなタイミングで気付くと想定してたんだ？
うっかり偶然他人の懐を探るシチュエーションなんて皆無だろ？　僕が無神経に『懐に隠してるんじゃないのか見せろよ』って暴漢みたいに胸に手を突っ込むとでも思ってたのか？　何だそれ？　触られ待ちだったのか？　触られたいのか？　そんな馬鹿な。

疑問その２、気付いたとして僕がどんな方法で奪うと思ってるんだ？
無理矢理胸元に手を突っ込むと思ってるのか？　それとも寝てる時やリラックスしてる時、隙を突いて懐に手を突っ込むとでも思ってるのか？　いやむしろ力尽くで脱がすと思ってるのか？　僕は痴漢か？　脱がされ待ちか？　脱がされたいのか？　そんな馬鹿な。

そんな訳で最近の僕はアイツをどうやって脱がすかしか考えてない。

策その１、うっかりを装ってお茶等を胸元にこぼして脱がす。
策その２、正面から「脱げよ」と迫る。

いや前者は誤って通帳まで濡れたら一巻の終わりだから無しだ。そして後者も絶望的に成功の可能性が低い。そもそもいきなり「脱げよ」って命令したところで素直に脱ぐ訳がない。そう簡単に脱ぐような奴であって欲しくない。脱いで欲しいけど脱いで欲しくない。臆病な自尊心と尊大な羞恥心だよ。うん、全然意味が違うね。
いや、でも結局、脱がすしかないよな？
トレーニングに誘う？
洗濯を申し出る？
バトルを仕掛けて服だけ吹っ飛ばす？
いっそ違法マイクを仕入れるのは？

……ダメだ、答えが出ない。
懐に仕舞ってある薄っぺらい通帳を奪う方法なんて、難易度が高過ぎる。

はあ、本当にどうしよう……誰か良いアドバイスしてくれないかな……