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1972.Corpse Reviver【〆】
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67 :ヨルク・ビス・アエタス
2021/02/15(月) 16:58

俺は知っている。〜エルフの里のバレンタイン〜



「炊事場に立つのが辛いと言っていたのに、今年も作ってくれたのか。ありがとう。食べるのが楽しみだ。」
皺の寄った分厚い手を労るように両手で包む。

「お前のチョコは宝石のように美しい。手間が掛かっただろう?ありがたく頂戴するよ。」
か細い手を取り、指先へ口づけ。

「ふふ、いつまで寄越す気だ?……感謝している。お前なしで第二兵団は成り立たない。」
どちらともなく固い抱擁。左、右と頬を合わせた。


国と民に育てられたのだと、つくづく実感を抱く日だ。優しい手が、温かな眼差しが、俺をここまで導いてくれた。だから身命を賭したい思う。せめて見える範囲だけでも。


ところで。
チョコレートと鼻血に因果関係は無いというが、俺はこれを否定したい。
民の気持ちに等しいものだ。当然すべて腹に収める。そうすると十中八九、鼻血が出る。春先は血塗れだ、胃もたれも甚だしい。
キャ○ジンという異世界の産物(アラヒトと同じ原理でこちら側に流れてきた)がこれによく効く。近日中に成分を解き明かせればと、密かに熱を燃やしている。


失礼…脱線した。


一日の終わりに訪ねたアラヒトは既に就寝済み。こんもり丸いブランケットが緩い上下を繰り返していた。

「──どこをほっつき歩いていたのだか。お前がいないから二重に礼を言う羽目になったぞ?」

これは貸しだ。ひとり言ち、託された小箱をベッドの脇に積み上げる。
贈り手は若い女性、荷物持ちを手伝ってもらったという老齢、子供──…とにかく数あまたにわたった。

同時に、黒髪の横に転がる小包に気づく。
このラッピングはヘンリキュスだ。100年貰い続ければ、だいたい傾向が読めてくる。

ヘンリキュス邸。噴水広場奥の隠れ屋敷へ、何の用で。

「……まあいい。おやすみ、アラヒト。良い夢を。」

こいつはモテる。
その理由は、誰より俺が知っている。




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