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わりかしスタンダードな梅雨といえた去年に比べ、
今年のそれは降ったり晴れたり。曖昧な顔したままでそっけなく立ち去っちまったのが少しばかり残念──といやあ、残念だ。
あいかわらず雨は嫌いだが、雨の日に歌を聴くのが好きでね。あいつも気に入ってくれたあの歌をさ。
初めて一緒に聴いたのも、梅雨か、その手前の時期だったんじゃねぇかなァ。

そういや、某コンビニチェーンのフラッペがうまいって話をしたのも同じ時期か。カ◯ピス味をいたく気に入って、俺が2回飲むあいだに5回も飲んだらしい。
今年はかの国民的電気鼠コラボが出たんだぜ。味がいいのはもちろん、パッケージがカワイイ。
黄色くてキュートで耳が長いとこなんて、俺の大事なあの子みてえ。なあ、そう思うだろ？


28日は毎月の記念日。6月12日は結婚記念日だった。
新居に引っ越して一年経つ。ベランダの家庭菜園は、最初こそエルフの魔力吸ったトマトが魔界植物化したり、ソレ食ったコカトリスがパワーアップしたりなんてトラブルが絶えなかったもんだが、今じゃあそれなりに見栄えよく育ち、成りかけの野菜が日差しを受けて輝いてる。シシトウはそろそろ収穫時期だな。煮浸しか、天ぷらにでもすっか。
愛犬のペスと鶏のコカトリスに任せて家を空けることも度々。あいつは政務で、俺は仕事や諸々のアレソレ。何日か留守にしたって、優秀なお掃除ロボの643が綺麗にしといてくれるのさ。

顔を合わせない日が続くと寂しくはあるが、あいつと出会わなきゃ今だって「人に逢えなくて寂しい」なんて気持ちさえ知らずに生きてただろう。そういう事実が俺を満たしてくれる。


近ごろ相当忙しそうで心配だが、俺も気張って仕事しながら、あいつの帰りを待つよ。

──28th and 1st Wedding Anniversary.

近況雑記📎⚡️



嫁と待ち合わせた居酒屋にて、ブラック◯ッカハイボール、ポテサラ、餃子にチャーハンをオーダーした俺。
「ややオッサン感がある」と指摘され失意にくれた後日、同店にて善処したメニューをオーダー。赤のグラスワインにピクルス、オリーブ、アスパラベーコンに豚の角煮だ。和食には白だと思われがちだが、角煮は赤も合うんだぜ、なんて格好つけつつ完食。仕事終わりに嫁と外食、満ち足りた時間にも関わらず、俺の心中は穏やかじゃなかった。
どうしてかなにを選んだってオッサンっぽい気がする。ひょっとして近頃、年齢サバ読むと微妙な顔されんのは気のせいじゃなかっ──
(なおヨルクちゃんは金柑酒にオリーブ、空豆、ウィンナーとアサリの酒蒸しを食ってた。女子か)




ちっちゃいヨルクちゃんを着せ替えて遊ぶのにハマってる。念のため言っておくが、別にいかれたわけじゃない。そういうアプリゲームの話だ。
素体の顔や髪型をカスタマイズしてミニ向日葵ちゃんをつくるところから始まり、ドレスや白衣や学生服、花魁にピンクデビルナース、果ては人魚姫まで。思いのままなにを着せたって、俺のちっちゃい向日葵ちゃんはかわいい顔で微笑んでくれる。画面のなかで小さい俺と向日葵ちゃんが戯れるさまは、鋭く、時に鈍く錆びた社会の刃(残業、休日出勤、満員電車etc)に傷付けられた俺の心身にとって良質の癒しと言えるだろう。
近ごろ、大きいほうの向日葵ちゃんも同じゲームを始めた。俺んちのより可愛らしい顔してたはずの子たちが、ちょっと目を離した隙に攻め顔になってた。いや〜、子供の成長って早えよなァ。結構、結構！


(随時更新)

♯28 花の＿散る＿らむ

俺は今、婚姻にあたり伴侶と選び抜いたマンションで暮らしていない。不穏な話を期待していたなら悪いが、あいつとは変わらず円満である。
マンションを離れているのは政務がゆえだ。急に舞い込んだ大事に、異世界への帰還を余儀なくされた。

毎日届く電信が昨今の活力である。ある時くれた写真には、満開の薄紅色が広がっていた。見事なその花は『桜』といって、根本に死体が埋まっているらしい。
よくよく見ると花の塊がいくつも枝にくっつくようにして咲いている。そのひと塊の密度が高ければ高いほど、荘厳で、豊かで、綺麗に見え、木としてランクが高いのだそうだ。
桜守と呼ばれる者が何十年と塊を育て、それで観光地の桜は山桜とは一線を画す見応えがあるのだという。
(我が母国ウィリディスには桜はないが、似たような白い花を咲かせる木が群生する丘があり、春になるとバスケットにサンドイッチを詰めて皆一様に花見に興じる。白い花をおさめたささやかな写真を、俺もあいつに送り返した。)

アラヒトは博識だ。日々たくさんの知識を与えてくれる。こと高級食材、とりわけ魚の知識に長け、その知識量たるや某著名人ではと疑いを持ったほどだ。海洋生物研究所の職員説が浮上したこともある。
改めて説明すれば、奴は接待や合コンに明け暮れた末に魚(食材)に詳しくなった外資系企業の営業マンだ。

……話が逸れた。
今では桜も、ウィリディスの花も散ってしまった。時とともに景色は移ろう。人の心も変わってゆく。けれどもお前が他の誰かを好いても、俺はお前を愛している。生涯側にいるよ。煩わしく感じるほどに、記念日のたび説いて聞かせよう。



You smile, I smile.
An year and 9months aniversary.