１ヶ月

悟

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合わせる顔がねぇ。

悟

ベクトルの話

ゲームが好き。
パーティー組んでドロ率のクソ低い素材求めて延々と周回したり、ランキングの上位狙って一人で何時間もイベ走り続けたり、ガチャ運に左右されて一喜一憂すんのが好き。
世界を救ったり海の中で基地作ったり、突然ゾンビの群れに放り込まれてサバイバルさせられたりって現実がいくらスーパーウルトライージーモードでも絶対できないような経験とか興奮とか、ゾクゾクするようなスリルとかそういうのが詰まってんだよな、ゲームには。

至さんが好き。
俺と大差ない、いや寧ろ俺よりゲーマーで、普段はすまし顔してて余裕そうなのに、はしゃいでる時はちょっとガキっぽくなって下らねぇことで俺と笑ってくれるあの人が好き。
俺がダメなことしたらちゃんと窘めて止めてくれるし、俺が話したことにちゃんと耳を傾けて受け止めて聞き入れてくれるあの人が好きだ。
至さんと一緒に居ると安心するし、不覚にもキュンとさせられたりするし、ソワソワもする。期待とかをしても良いんだって思える。それって、すげぇことだろ。

ゲームする時間も至さんとの時間も、どっちも楽しくて好きだけど、同じにはならねェし比べられもしない。当然上下とかもねェし釣り合いとかもねェ。
違うベクトルの『好き』で、両方俺にとっては必要なもんだと思ってる。あの人はゲームじゃねぇし、ゲームはあの人にはなれねぇ。

そりゃ至さんとすげー良い雰囲気だった時とかに俺が寝落ちちまったら、あの雰囲気セーブしといてまた続きからコンティニューできりゃなぁなんて思わねェこともないけど。無理なワケで。
ま、例えば翌朝になっちまっても至さんに俺が大事にされてるってことは変わらねぇし、新しいシーン描いて二人の会話から違うタイミングでまた良い雰囲気にすりゃ良いっしょ。
なんて思っちまう俺は相当な浮かれポンチだと思うけどな。

閑話休題

話を元に戻すか。
趣味だったり好きなことだったり、時間使いたいことは人それぞれにあって、恋人とは同じベクトルで語れねぇモノがあったって良いし俺にだってある。
でも意外と同意が貰えねぇってのも俺は経験済み。
だから、至さんが酷く申し訳無さそうにスケジュールと予定の話をしてきた時に、至さんの申し訳無さそうにする理由も分かったし俺にはそんな顔する必要ねぇってちゃんとこの人に分かって貰わねぇとって思ったわけ。


あの人が楽しんでる時間が好き。
ゲームでも、飯食うのでも、友達と遊んでるのでも良い。
そりゃ俺といる時間も勿論楽しんで欲しいし、楽しませる気概は当然あるけど、それ以外のことだって至さんが楽しんでしてることなら何でも良い。
そんで、それを俺に楽しげに話したり、今日はこんなことしたって虹色のヤベェたこ焼きの写真を突然送りつけてきたりして共有してくれんのも好き。惚れた相手が楽しいことしてんのにそれを喜ばないワケがねぇだろ。


だから睡眠削って俺が寝てからゲームしたり、我慢したりとかあんたがしんどくなるようなことすんなよ。至さん。

BANRI

確保

悟

僕だって赤井の為を思えば悟られる前に全てを飲み込んでしまうのが一番かなって考えたんですよ。でも、あなたってそれで喜びます？喜ばないでしょ、きっと。
それにあなたが、まるで自分の我儘みたいに「君を不安なまま寝かせるのは嫌だな」なんて言うから。
赤井、あなた一体いつから僕の口を割らせるのが得意になったんですか？スナイパーの仕事じゃないだろ、赤井が黒の組織側についてたら僕も危なかったな。…なんて憎まれ口を叩くことも出来ずについ吐き出してしまった。
だって、そんな我儘らしくない我儘あります？日本語では、相手のことを想って慮っての言葉だっていうのがわかりきっているものを我儘とは言わないんですよ。そういうのは、愛情って呼ぶんです。

今だから言いますけど、楽な任務じゃなかった。湧き上がる疑問から目を背けて組織にとって不都合なことには目を瞑り、与えられた役割に沿って動くだけの、…誰も信じられない潜入でした。常に気を張って、どの顔の僕も完璧でいなくちゃいけない。そんな日でした。
なのに帰るとあなたが居て、僕を呼んで、甘やかしてくれるから。つい緊張が解けて、気が緩んで、疲れが思考を鈍くして。ふと去来した過去の他愛ない思い出に足を掬われただけなんですよ。
僕だって、抱き締めてくるこの存外不器用な男の腕を離したくないな、なんて思ってしまった。それで不安になって情けないところを見せました。我欲ばかりで恥ずかしいのは同じですよ、縋りついて甘えてしまってるのは僕もだから。
だいたい、あなたのことを負担だなんて僕一言でも言いました？あなたがもっと寄りかかってきたって、そのぐらいで倒れるほど僕は柔じゃない。
自分ばかりがなんて思うなよ、おまえが甘えてくるのも我儘だって負担になんてなりやしない。俺を舐めるなFBI！

まぁ、それはこれから追々ってことにしといてあげます。だって、この先も僕といてくれるんでしょう？赤井。存分に自惚れてくださいね。

降谷