あぁいい夜だ! 美しい月に最高のムード、 命を捨てるにぴったりだと思わないかね? こんな夜は客人もよくよく訪れる。 今宵はどうもてなそうか。 あぁ、そうだね、マドモアゼル。 森で困ったふりをして、 助けられたお礼にと館へ招くのもいい。 それならば影片が適役だろう…… 僕?僕はそんなふうに こそこそと罠を張るような真似はしないよ。 そうと決まれば……影片! ……君、まだ真っ当に喋れないのかね。 この一年間なにをしていたのか。 チッチッチッ!役立たずの小間使いなど 使い道がなければ捨ててしまうよ。 うるさい!赤子のように泣くな! ああもう包帯が解けているのだよ。 これは自分で巻いたのかね。 はぁ……僕の役に立ちたいだの言うのなら もう少し頑張りたまえ。 | さぁ、これで整え方は分かっただろう。 将来的に君がひとりでも、 この館で生きていけるように ひとつずつ覚えていけば良い。 なっ!ななな……どうしていきなり 包帯をぐしゃぐしゃにするのだね……!? あぁせっかく綺麗に整えられたというのに。 こんなにも永く共にいても 君の考えていることは 未ださっぱり分からないね。 無窮の刻を過ごそうとも 君のことが理解できる気がしないのだよ…… ……何をへらへらと笑っているのかね。 まったく……興が削がれた。 迷いびと探しはもう良いよ。 今宵は君と過ごすとしようか。 手を取って、影片。 歌い踊り夜を明かそう。 幾つも幾つもの夜を。 |