着信音のつんざくような五月蠅さが耳に刺さる深夜1時46分。 電話口の不協和音。君はほんとうにおしゃべりが下手だね。 #「お師さんエジプトなんか行かんでぇ!!!」 「は?」 僕はね、一昨日から作業をし続けていて 君の妄言に付き合っている暇はないのだよ。 #「お師さんがエジプト行っちゃう…。」 「わざわざかけ直してこなくて良い。行く予定はない。」 #「あんな、あんな、ドラマティカのエジプト公演…。 #行ったら何か月も帰ってこぉへんって…。」 「……公演の予定もないよ。 第一、今だって数か月帰らないのは同じだろう。」 #「すぐ会えん…。」 「今もそうだろう。」 #「野盗に…。」 「いつの時代の話をしているのかね……。 夢は夢だ。それ以上でも以下でもない。 なんの夢を見たとて君にも僕にも影響は出るものではないよ。」 #「寂しい…。」 「結局のところそれだね。君、寂しがりなのだから。 まぁ、月末にはそちらへ帰るからそれまで待っていたまえよ。」 |