はぁ……。 親戚連中はどうせ僕ではなく祖父や兄の顔を見に来ているのだから、 僕がその場に居る必要はないだろうに。 息が詰まるよ。まったく。 #「おうち抜け出してきて良かったんやろか〜……。」 「どうせ気付きもしないのだから良いのだよ。 それより、初詣だ。背筋を正しなさい。」 境内に入る前に少しだけ身なりを整える。 首へと巻いているマフラーの所為か、 ただでさえ自由に跳ね気味の髪が元気に遊んでいた。 しかし、神の住まう場所の空気というものは良いものだね。 身体の隅々まで澄み切ったものが行き渡る。 何かを生み出すというときに必要なのはこれだ、この感覚だ。 君、御守りは参拝の後。 #「あっ、中吉や。でも新しいこと始めるんはえぇって。」 「そう、ならタイミングが良かったね。 君はこれからひとりで新しい『Valkyrie』を背負っていくのだし。 門出を祝福してくれているようだ。」 #「まぁ〜……そういう見方も……お師さんは運勢どうなん。」 「僕?……僕はまぁ、吉ではあるね。ただし新しいことは進めるなと。 そんな言葉に僕の人生を左右されるつもりはないけれどね。」 #「なに!?なにかするん!?おれ聞いてへんけど!? #おれんこと置いて!?いややっ!ややー! #おれを置いていかんで!あーん!あーん!」 「進路としてまだ相談している程度で…… と、そう大きな声で泣くんじゃない!」 #「あ〜……ん……。」 「小さければ良いという話でもない。」 |