僕よりも先に夢の世界へ旅立ってしまった君の顔を眺め、 手元を照らすライトが眠りの妨げにならないよう身体で影を作る。 小一時間ほど経った頃だろうか、 不意に後ろでひとが動く気配がした。 「……まだ夜中だよ。寝ていなさい。」 #「んあ……お師さん、お洋服つくっとるん?」 「そう。」 背中に温もりを感じる。 振り向かなくとも、ぬくいベッドからわざわざ離れ しなやかな肢体を僕へ寄り添わせにきたのだと分かった。 #「マド姉ぇもさむくあらへんねぇ。えへへ。」 「どうして君が嬉しそうなの。」 #「おれ知っとるから。」 #「お師さんが作ってくれるお洋服あったかい。」 「僕が君へ拵えるのは衣装であって、 暖かさを得るためのものとは性質が違うのだけど。」 #「でもおれお師さんのお洋服知っとるんよ。」 #「みかもさむないね。」 「……さては君、寝ぼけているね?」 机上のスタンドライトの明かりを消して眠たげな人形のほうへ振り向く。 彼は夢の世界から半分戻れていないような表情をしていた。 今日の作業はこの辺で終いだね。 #「みかあったかい。」 腕の中で鈴を転がすように笑う声がした。 |