『 1 0 4 』

兵頭とまたひとつ、節目を迎えた。

何の意識もしてこなかったただの数字が、人生において大きな意味を持つモンになってからもうどれくらいだろうな。
昔はクラスメイト達が、彼氏と一ヶ月記念日デートしただの、彼女との記念日の日付をSNSのIDにしてるだの話してんの聞いて、そういうのいちいち気にして生きんのってなんか女々しいし、相手に縛られてるみたいでダサくね？とか思ってたんだよ、俺も。
今でもそういう考えが丸ごと変わったわけじゃねーし、マメに記念日を祝うわけでもねーんだけど、ふとした瞬間にアイツと俺に関わる数字を見ると「あ、」って視線が奪われるようになった。
上手く説明できねーけど、気にかける特別な存在が増えるって、弱味が増えるっつーか、身軽に動けなくなるっつーか、とにかく枷になるようなことだと思ってた。
俺にはアレもコレもって背負えるほどの熱意も体力もなかったから、何も持たねぇ方がいいだろって安易に考えてたんだよな。
でも実際は、気にかけるもの、大切な存在が増えるって、ふとした瞬間にそれを見かけたり、思い浮かべたりして、「もーちょい頑張るか」って気力が回復する、癒しのセーブポイントが増えたみてぇな？そういう感覚なんだなってここ数年で噛み締めてるわ。


「字が下手で悪ぃ」って、珍しく自信なさげに差し出された二枚の紙には頭悩ませて書いたであろう感謝の言葉。
柄でもねーくせに、たまには手書きのメモひとつくらい寄越せよって俺が言ったの覚えてて、律儀に実行してくるところ、嫌いじゃねぇ。
料理しかり、ゲームしかり、手書きのメッセージしかり。苦手なことだからって最初っから諦めずに、取り敢えずやってみるようになったよな、兵頭も。
俺も兵頭も、過ごした月日の分だけ変わって、過ごした月日の分だけ変わらず積み上げてきた。
変わることも、変わらないことと同じくらい良いことだって、俺に教えてくれてサンキュ。
……っていうのを、本人に言うタイミングを逃したから、ここに書いておく。