amber.
日記のタイトル。兵頭はきっと深く考えずに最近の会話の中からこれを選んだんだろうけど。天然樹脂が奇跡的な条件を満たして長い年月を重ねたときにだけできる化石…琥珀の名を冠する甘味。奇跡みてぇな出会いを果たしたんだ、俺と兵頭の関係もそうやって永く積み重ねていけたらいい……なんて考えすぎだな。
恋人を某猫型ロボットに擬えるってどういう了見だよ。別にそのなんちゃらこんにゃくなんざ食わなくても、わざわざイージーモードだとか威張るまでもなく、兵頭の言葉は俺の中にすっと馴染むんだよな。あの満月みたいな目がこっちを見てほんの一言二言零すだけで、不思議と言いたいことが分かって、唇が勝手に動いて「俺も。」って答えてる。兵頭と出会ってから、相性がいい、波長が合うってのがどういうことなのか、毎日思い知らされてる気がする。
夜中にゲームをしながら兵頭の寝顔を眺めんのが好きだ。安心しきった顔をして寝こけてる俺の恋人はたまに寝惚けた言葉を漏らす。それを聞けるのも俺だけの特権だから。ギリギリまで音量を落としたスマホのゲーム音を、それでもミュートにはしねーのは、起こしたくはねーけど起きてくれたら嬉しいっつー俺の中の微妙な葛藤の表れなわけで。直接は言ってやらねーけど。
兵頭に出会って、俺の日々は変わった。穏やかに、甘ったるく。そういうのを全部、少しずつ、ここに書き貯めていきたい。時々読み返して、味わうために。