私とだけ笑ってよ、私とだけ幸せでいて。……それが叶うならそれでもよかったけど、どうせ叶いやしないでしょ？
だから代わりに、貴方を傷つけて苦しめて、泣いて怒るまで踏み躙ってあげる。
その眼が私をみてくれるならそれでいい。お姉ちゃんのこころを揺さぶれるのなら、その感情が殺意だったとしても構わない。どのみち閉じたこの眼に届くのは、きっと射殺すような鋭い情動の残滓くらいだから。生温い感情はなにもかも取り零してしまうから。

——ねえ、ねえ、ずっと私をみていてね。ずっと私をアイしていて。
最期まで貴方に恋焦がれる私を、どうかその手で縊り殺して欲しい。

トオルにお礼書きたいんだけど、渡すのは私じゃないほうがいいと思うんだよね……うーむ。

って思って井浦に代筆してもらったら文面うるさすぎて思わず破っちゃった……。ごめん井浦。もうちょい静かにして。

「左下」「左下……？」のとこが特に好きだ、……これでおおよそ伝わるだろ。まさかの方面から同意が返ってきて驚いたが、楽しいよなアレ。
あと、久しぶりにお前の顔が見られて嬉しかった。言うことないなんてつれないこと言うなよ、私はいつでもお前を待ってるぜ？なーんてな、ふふふ。
ま、冗談はさておき。気が向いたらまたこうして喋りに来てくれ、茶くらいは出してやろう。……それとも話す代わりに肝試しの肝でも潰しに行くか？私たちじゃ歌の通りとは行かないし、そもそももう冬だがな。

たとえば私が帰ってきたとき、お姉ちゃんが現代美術みたいにねじくれて生と死を一度に踏み躙るような他殺体になっていたって、その強靭な精神すら死に絶える程滅茶苦茶にレイプされた末打ち捨てられていたって、なんの異変か統制を失った獣たちに群がられて食い荒らされていたって、私のこころはちっとも痛まない。
他人なんてどうだっていい。誰よりも恋焦がれるお姉ちゃんが相手であってもそれは同じ。
——お姉ちゃんならきっとわかってるよね。私の選択によってお姉ちゃんがどんなにか傷つくかもわかっていながら、それでも我が身可愛さでこの眼を閉じるような妹だったんだもの。この私の醜悪さは、お姉ちゃんがいちばんよく読めている筈だわ。

それなのに、私が帰る度笑って迎え入れる貴方のこころが、いまはもう視えないこころが、私はずっとずっと怖くてたまらなかった。

◆

私を部屋に閉じ込めておくことなんてできっこないのよ。だって無意識は抑圧できない。
だから気の済むまで放浪しよう。人間を眺めて弄んで嬲って殺そう。どうせ世界はもう腐り切ってるんだもの、死体が多少増えたところでなにも変わらないわ。
留まりたい場所に留まれない、囚われたい鎖に触れられもしない、それこそがとびきりの呪縛よね？きっと私はお姉ちゃんよりずうっと雁字搦めだよ。

地縛霊でも夜更かしはしんどい。
ねー、ヤシロ。今日は俺と一緒に寝よ？……どこでって、そりゃーもちろん女子トイレだけど？

◆

卒業までたった数年だよ、ヤシロ。
俺が何年この学園にいると思ってんの？俺を呼べる子は珍しかったけど、それだけ。助手なんかいなくてもいままでやって来れてたしね。
——ヤシロの願いは叶えてあげる。叶ったら、それが最後だ。

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少年からパクった本がすげー面白かった。