修行に行く日が見えてきたかもしれない｡
行って帰ってきても、きっとこの手記は手放せないだろうな。
それは、俺が写しだからだろうか。

最近はとても眠くて起きていられない。出陣の時は目が覚めるのに本丸に帰るととても眠くて手入れは最後に回って部屋で寝ていたらもう朝になっていた。多分兄弟が刀だけを持っていったんだろう、小さな擦り傷が治っていた。少しでも生存が減ると手入れするのが主だ、感謝とともに謝罪をしたら疲れているんだと言われた。そうだろうか…

大丈夫で塗りつぶされていく本心、わかってる。線引きしてこれ以上来させないようにしているのは俺だ。だけどね、それは当然の話だ。俺を知っているのなら分かるだろうけど、俺は本科山姥切として本丸の皆に情けない姿を見せたくない。心配？無理しないで？そう、優しさで言ってくれてるのは有難いね。けど優しさで俺の心の陰りは拭えないよ、だから君には言わない。いいや、君にも言わない。
言ったところで何になるんだろうね、ただ俺が吐露するだけかな。そんなの絶対に嫌だ、明かしたのに何もならないなんて救われない話は懲り懲りだ。

（文字が消された跡）
忘れた時に、見返した時にそういえばそうだったなと言えるように

消したのに忘れたも何も無いだろうに……当時の俺は何をしているんだか…

相談出来る刀はちゃんと信頼出来る刀を選んで相談できる、写しにはできない事だ。多くを語らないのが長く話すコツだと言われた、確かにそうだと思う。誰も写しのことに興味はないんだろう、言わない方がいいに決まってる。言えないことが沢山あって素直だと本歌に言われる度、なんとも言えない気持ちになる。

「なんか暗くなったね、山姥切」
「そうか、特になにもないんだが…」
「何もないならいいけど」
「強いて言うなら大阪城を見飽きたことぐらいだろうか」