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スレ一覧
┗1640.剥製.【保存】(35-39/74)

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39 :久保田誠人(WILD ADAPTER)
2021/12/28(火) 23:59



昨日の影踏み。今日の眩暈。明日の憂鬱。ロックグラスの中に沈殿して混ざらない溜息。急かさなくても夜は来るし、逃げたところで朝は来る。

いつか泥酔するほどに酔っても、肺が黒くなるほどに喫っても救われなくなる日が来る。甘い飴玉や清涼感のあるガムでは誤魔化せなくなったやるせなさを持て余して日々を過ごしている。繰り返し、明日も。



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38 :坂_口_安_吾(文_豪_と_錬_金_術_師)
2021/12/28(火) 23:48



中途半端な睡眠時間で繰り返し夢をみていた。細切れに続く場面は全て噛み合わず、出て来る人間も知らない奴ばかり。奇妙な映像は不自然に混ざり合い、次第に色も音も平衡感覚も歪んでいく。ぐわんと大きく揺れる世界。その最後の最後で懐かしい誰かが俺に振り向いた。

煙草の煙が起き抜けの目に沁みる。残っている不快感は浅い眠りのせいで、落ち着かないのは最後に見た顔のせいだろう。夢なら夢らしく終われば良いものを、なんだってよく出来た姿を見せたりしたんだか。ああ、まったく敵わねえ。少しずつ冴えていく頭が漸く一つの結論に至ると自然と笑いが込み上げた。

夢に誰かが出て来るのはそいつに会いたい情念が生み出すからだと聞いたことがある。あの頃はそういうもんかとただ浅はかに納得していた。今の俺なら、間違ってもそれはねえよって言い返せる程度には物事が理解出来ている。



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37 :坂_口_安_吾(文_豪_と_錬_金_術_師)
2021/12/26(日) 19:23



聖夜祭、降誕祭。他にも呼び名がある一日を過ぎて図書館は何ともまぁ死屍累々転がっている。見事に呑んだくればかり揃っているからな。飲む理由に託けて酒瓶も人間も転がるなんざよくある話。例に漏れず俺もその一人……になるはずだったんだが、転がるより先に珍しく酔いが覚めてこの惨状を目の当たりにしている、と。どうこうしねぇし、何なら追い酒も吝かじゃないが今は必要ないと気づいている。嵐が過ぎ去った後の静けさ。灯りもつけず、誰と話すでもなく、この場から立ち去る訳でもなく。ただ一人じっと暗がりの中でひんやりとした窓辺に背を預けて眠り転けている連中を眺めている。
賑やかだ。そして酷く、孤独だ。それは哀惜を伴うものではなく心地好い孤独といえる。独りでは知ることの出来ない本当の孤独は誰かと共に在ることで見つけられる。酔いが覚めるように、いつかこの生活からも覚める日が来るんだろう。便利で都合のいい夢だと思っている。昔できなかったことをやり直しているとすら。本当に、都合良くできた夢だ。ただの本の擬人化が、人間と同じように飲み食いし、思想し、感情を揺らし、寄せ集まって生活を営んでいる。ふとした瞬間に冷水を浴びるように、この現状に恐ろしさを感じることも、ある。いつだってどの局面においても"間に合わない"俺が"間に合う"ようになってきている。事実は小説よりも奇なり。それはそれで受け入れるべき現実でもある。
連中が起きたら後始末に追われて、いつもの日常に戻って、あと数日したら今度は年末年始の宴を始めるんだろう。呑気なもんだ。そしてどうしようもなく、人間だ。五年前から続くこの夢の方が、余程人間らしく生きている。



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36 :坂_口_安_吾(文_豪_と_錬_金_術_師)
2021/12/23(木) 18:33



待ち人来らず、待ちぼうけってな。
俺の幸福はあんただ。……あんただった。ただそれだけだったんだ。

忘れるために思い出すんだろう。これから先も。



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35 :アダム(禁断恋愛_エヴァの果実)
2021/12/19(日) 13:25



長らくこの仕事をしていると、ただ仕事を熟すだけでは飽きてしまってね。アレを集めるならアレを保管するに相応しい器を用意して然るべきだろう。けれど、ただ無機質な箱や入れ物では面白味に欠ける。そこであの人間に目をつけたのさ。あの人間ならば、私の望む器を生み出してくれると思ってね。依頼した際に提示された金額には心付けのつもりで上乗せした額も用意した。予想通りだったよ。生み出された器は私の望む完璧さで佇んでいた。その器に私の持つ十二対の命のうち、一つを与えた。目を閉じていた器が瞬きをし、息をしたことに人間は大層驚いていたが、そんなこと私にかかれば造作もない。だが人間にとっては違うのだろう。特にこの、人形師という者には。

人形師の中でもこの人間は特に愚かだった。自分で生み出したものを生み出した矢先に壊す。上手く出来ないという理由だけで、形になりそびれた残骸を部屋の片隅に積み上げていく。最後まで出来たと思ってもそのどれもが魂の篭っていない空の器ばかりときた。私が依頼した器は渾身の作だったのか命を吹き込む前から執着が見えたが、それでも空の器には違いない。しまいにはこの器が昔から人間で、昔から無口で、感情表現が苦手なだけだと思い込もうとした。まったくの欺瞞だろう。笑わせてくれる。まあ最終的にはこの人間は自らの命をもってこの器に魂を込めた訳だが。

私は長らくこの仕事をしている。魂を集める仕事だ。ただ集めるだけではつまらなくてね。ちょっとした遊びを思いついたんだ。そのために、ある人間に器を作るよう頼んだのさ──人の形をした器をね。出来上がったその器には私が持つ十二の命のうちの一つを込めた。その後、生みの親である人形師一人の魂を食べた。この器は一つ魂を食べるごとに一つ人間らしさを手に入れる。心はこれから出来ていくんだ。どんな人格が形成されるのか楽しみでならない。この人形を、私だけの人間にするのが私が思いついた遊びだ。……それにしても、あの人形師は確かに愚かだが、一つだけ悪くないと思ったものがある。この器につけた名前さ。

「ああ、お帰り。……ちゃんと食べてきたんだな。少しは腹も膨れただろう、エヴァ」

二つ、三つと食料を取り込んで、この器も少しずつ人間らしい表情をするようになった。これがどうなっていくのか──私が作る、私だけの人間。時間をかけて完成させよう。



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