吹き出しの中にするか、外にするか。眠るお前の顔を眺めて迷ったまま、昨日も今日も呑み込んで明日を迎える。
水平線の向こうで空と海が交わる。星が沈む先はいつも海なんだ。全ての生き物の原初であり還る場所。ある時は包み込むような慈愛で、ある時は呑み込むような激しさで。昏いのかと思えば澄んでもいる。
みちる。ねえ、みちる。君はいつも僕を包み込んでくれる。愛おしむように、慈しむように、守るように。僕はそれに甘えてしまうけれど、本当はいつも怖いんだ。こんなことを言ったら笑う?僕らしくないって思う?でも本当だよ。それすらも言葉にできないけれどね。
みちる。みちる。……みちる。僕の、海。
2021年とお別れをする大晦日。あと数時間で2022年に突入って何の冗談だよって思いつつ炬燵の中でオレンジ齧ってんのも恒例になっている。このままどこに向かって進めばいいのかさっぱりわかんねぇけど、進まなくちゃならない。立ち止まる気もない。来年もきっと俺は俺のままで世界を転々としているんだろう。昨日の敵は今日の友で、逆も然り。定住できねぇのは仕方ないっちゃ仕方ない。その分世界を見てやるぜくらいの気持ち。今はひたすら炬燵に住まう未確認生物のようになっちまってるけど。どこに居たって、誰と過ごしたって、テニスできりゃいい。
何度も訪れたさようならと、抱えきれなくなった幾つもの後悔を数えている。見送った愛おしさを遠くに眺めて、果たせなかった約束を海へと流す。俺はずっとここにいるが、通り過ぎた影はもうすれ違うこともない。
昔よりも海を渡ることは容易くなったというのに、昔よりも海を渡ることが難しくなった。傷だらけの身体で傷つきたくないっていう、ただそれだけの理由で。海峡を越えた先にいるだろう姿を思い描いても俺はどこにも行けない。
「お前に出会った時に、俺も生まれたんだよ」