top
眼鏡、汁だくで。
 ┗135

135 :仁王雅治
2007/10/03 22:43

9/19

学校帰り、柳生と買い物に行ってきた。

真田に頼まれたグリップとガットのスペアと、あと何だったか忘れた。なんか。柳生が買っとったからわからん。
それからシューズを見て、ついでに服も。
紳士服売り場に入った時のあいつの満足気な顔ったらないな。指摘したら慌てて否定しよった。可愛い奴だ。(でも俺はあいつの選ぶおっさん服なんか着ないから普通にメンズに入った。ついてきてくれたが気に入らんようだった。とりあえず試着室へ入ってみりゃいいのに。入れ替わる時は喜んで俺の服着るくせに柳生のアホ)

最後、夜7時頃になってたか。駅前のカフェでダラダラ喋った。柳生はコーヒー、俺はココア。ココアの上に生クリームが思い切り乗ってたからそれは柳生にあーんしてやった。凄いなあいつ、あんな重たいクリームだけよう食うの。俺が食わしてたんじゃけど。

8時半を回って、柳生の門限が近くなって…まだ話し足りん。帰しとうない、つってゴネて困らせる。(こういう顔を見るんが好き。)
散々引っ張って話題コロコロ変えて粘ったが仕方ないから改札まで送った。が、通る直前になってあいつ、定期が見つからんとか言い出してな。んな大事なもんなくしたなんて紳士も形無しじゃの、とか適当に言ったら帰れんのと明日から学校来れんのと時間遅いんと相成ってかホントに半泣きになりよって。とりあえず駅員のとこに説明に行ってこいと柳生を行かせて、その間に俺が柳生の家(結構信用おかれてる。有り難い)に電話したんだが、喋ってる間に戻ってきてなー。会話を聞かれてしまった。…ま、わざと伸ばして聞かせたんだが。
まっすぐ顔、見ながら、電話口に
「今晩は僕の家に泊まって貰おうと思って。」

…この時の柳生の「は?」みたいな顔も結構、良い。直後思考を巡らせ、出来事を整理し、回転し始める頭を掴んでじゃあ行こうか、と電話を切って定期を返してやる。(俺がスッた。)
チェックメイト。同時に全部理解した、怒りやら呆れやら混じった言葉にならない騙された顔というのが一番、好きだ。これが見たくてやる。困らせたい。惑わせたい。後戻りできない苦笑いと一緒に、
「仁王君には敵いませんよ」
本当の主権がお前にあるのを、お前さんは知らん。


当然俺の家に連れて帰るつもりはない。よく使う知り合いの空部屋へ泊まった。
深夜まで話し込んで、疲れた柳生が眠ったのを見届けてから、そのベッドに凭れかかって座って寝る。(こうすると柳生が起きてシーツが動けば起きられる。)

朝には萎びたインスタントコーヒーを淹れて、学校へ行く。
午前中から腹が減ったのをなんも言わずに我慢してる柳生(休み時間に購買へ行ってパン買う発想はないらしい)の隣で女子に貰ったサンドイッチを食べて、
なんじゃチラチラ見て。欲しいんか? 朝食べとらんのか? お前さんが? 珍しいのお寝坊でもしたか?
何も言えんのが可愛い。からかうのを装って柳生にも食わしてやる。文句言いながらでないとこの時間教室内じゃ食えんようだ。
俺達だけが通じ合っていた。



なんて昔話を、思い出した。
あれから何度か使ったあの部屋はどうなってるか知らん。変わらず寝顔を見せた事は一度もない。

帰りの切符を同じカフェの同じ席でスッて、時間だけが19時半に同じように改札まで送った。切符が紛失したことに気付いた柳生は少し鞄を探した後、俺に、知りませんかと訊いた。
さあのー。
に、ピヨ、がいかんかったんかの。知らんぜよと言うたのに返してくださいと答えてきた。
「私も同じ日を思い出していました。」
上出来だ。

しかも、仁王君がそうして故意に訛って喋るのは、騙しか嘘か照れか、いずれにせよ何か隠したときだけです、ときた。
当たりじゃよ。参った、詐欺師も形無しだ、な、柳生。


…なんてな。

よう見てみんしゃい。柳生、お前がどう思ってるかも知ってるが、この目に映ったことはない。
俺の欺けん相手は常にひとりだけでいいんじゃよ。

[返信][削除][編集]



[Home][設定][Admin]

[PR]♪テニミュ特集♪(携帯リンク)

WHOCARES.JP