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らゐご撫で戻り日記
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365 :
跡部景吾
2012/06/21 21:26
俺はその時、泣いてしまった。
痛みよりも悔しさが勝ったような色々ごちゃまぜになった感情に押し潰されて拭うことも出来ない涙をだだ流しにした。
少し前俺はテーブルにおいてあるメモを見た。
シェフの字で、奴曰く「俺でも作れる」夕飯の作り方が書いてあった。
無言の挑戦を見てしまっては仕方がないと手を洗って腕まくりをして材料を並べて、いざ!
と目を見開いたのがいけなかったのか俺の大きな瞳はスタート直後たまねぎにやられた。
みじん切りは文句なしに完璧だ。
色々零れて犬が食ってしまう前に拾うのがちょいと手間だったがとても細かく美しく整った。
なのにあの痛み。何なんだアレ。主婦やシェフはどんな目玉をしているのか。
普段俺は泣かない方だと思う、つーか中学生男児がそうそう泣いてらんねェ。
しかしどうしてもしょうがないとき、感動したとき小指が痛かったときほんの少し目の前がかすむことはある。
そんな時でも俺は顔までは崩さないタイプでいたいと思っているタイプだと思う。
なのに、なのに痛すぎて破願。敵に塗れた手で顔は拭えない。
…ま。ミートソースは無事に出来上がった。
話のメインは此処からだ。
ミートソースのほかに生野菜をちぎって放り込んだだけの山盛りサラダもこしらえた。
いつぞやはモッツァレラをわざわざ買いに行ってトマトを並べオリーブオイルぶっかけただけのサラダも作ったんだぜ。
出して並べるだけで食えるなんて、野菜は実に有能だ。
で、俺はその日キッチンでじゃがいもを見つけた。
食いたくなった。
シェフのレシピ無しで俺が料理を作るのはとても危険である、食材たちにとってな。
自覚もしていたが食いたかったので、じゃがいもを洗って剥いて切ってるうちにシェフが帰宅するだろうと見込んで続けてみた。
が、なかなか帰ってこない。
まずじゃがいもと一緒になれる仲の良い食材を探してみた。
因みに勿論あまり手がかからないことがその食材の一次オーディションの最重要課題だ。
冷蔵庫を開けた、ウィンナー発見。
奴は確かフライパンで転がすだけで食えた気がする、採用。寧ろ生でもいけたような。
やったら長いウィンナーだったのでスムーズに細かく切ってみた。
まだシェフは帰らない。
切ったじゃがいもとウィンナーを仲良く並べてみると、色が薄い。
ウィンナーが白かったのでそれもそうだ。そこで、色味が欲しくなる。
冷蔵庫にはほうれん草があったがそのままフライパンに突っ込んでいいのかが謎だったので落選。
想像でしかないが一瞬で焦がしそうな気がする。
椎茸の使い方も、最近煮物とひじき以外で出会わない気がしたので却下。
野菜室を開けてみるとなぜかピーマンが3袋もあった。
こいつらは使ったことがある、採用だ。
適当に包丁を入れてたくさん食えるように小さく切ってみて材料探しに飽きたので休憩。
ここで、言っておかなければならないことが。
俺は先ず最初にじゃがいもを切り終えた時点で、そいつらを水につけておいた。
確かつけろと、前シェフに言われた気がする。
何のためかはわからないが思い出したときにとても褒めてもらいたい気分になった。そんなアピール。
そしてフライパンには勿論じゃがいもを最初に入れてみた。
適当に転がして他の奴らも入れてみた。
味付けを忘れていた、思いつかない、そんな俺の目の前に胡椒。
豪快に振って、何となく塩も振って、ピーマン焦げてきたのにじゃがいも固ェやべェなタイミングでシェフ帰宅。
事の顛末を話し、電子レンジ様が華麗にこの問題を解決してくれた。
あの日の料理は面白かったぜ。
ちなみに味付けは他に何の選択肢があったのか、教えてくれ柳。宍戸でも良い。醤油?
最後まで読んだ奴、お前偉すぎるな。
撫でてやるよ。(よちよち)
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