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らゐご撫で戻り日記
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376 :
跡部景吾
2012/08/12 20:10
暑すぎて、相変わらずプールに通う。
部活中にボール数え機で負傷した足がほんの少し涙を滲ませたが、無視しておいた。
気の済むまで往復して、たまに隣のレーンの誰かと会話を交わし、世間話に飽きたころ退散。
真っ直ぐシャワー室に入ってカーテンを引き、水着を脱ぎ捨てる。
硬くなった髪をほぐしたりプールの水を流したりしながら、一々止まるシャワーを鬱陶しく思い始める。
一間隔が短すぎてまともに塩素も落ちねぇよ、と悶々とした挙句、ふと気づく。
手元には偶然、ゴムがある。
暫くじっと考えた後、何とかシャワーの、あの、押すところを固定できないか本気で立ち向かってみた。
ゴムを回し、捻り、伸ばし、たまにソレが自分のほうに飛んできたが華麗に避けて、ついに俺は絶妙のバランスを手に入れた。
マッパで勝ち取ったあの達成感と言ったら。
勿論無駄に出しっぱなしにはせずに、意気揚々と使うときだけ裏技を駆使したに過ぎない。
告げ口はしないように。
部長も凝りそうですね、と言ったあいつの顔が浮かんだ気がした。
若気の至りと答えたはずだったのに、どうやらそうとも言い切れないようだぜ。
戻してやったゴールテープを目前に、後輩はどうやら「ツン」をすててしまったらしい。
恐ろしく素直な姿を見て目頭を押さえそうになってしまった。
ところどころ気持ちが高ぶりすぎて手がすべったようなところが見受けられるのがまた感動する。
あんなにも純粋な後輩に、下克上なんてきっとできやしないよなァ、樺地。
今週の映画は先輩が大好きだと語ったそれ。
昔見たような気がしたのに、なんとなく思い出せたのは「ボート」が出ていたような気がする、ぐらい。
身分違いの恋と親に隠されていた365通のラブレター。
朝起きたらメモと複数の矢印の先にプレゼント。
くすぐったすぎる程王道なのに飽きさせない、せつない映画だった。泣いてない。
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