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⊂恋は★全力失速⊃
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233 :
芥川慈郎
2007/03/12 14:59
泣いた。
猜疑も躊躇も忘れて。
君と一緒に歩こうと、決めたの。
その日は雪が降っていて。
白がくすんだ青に吸い込まれて、潮風は冷たくて寒くて、テトラポッドを渡って海の先を目指した。
後方には、寒くて危険な方へ行きたがる俺に呆れ顔の彼。マフラーに顔を埋めて、やっぱり怒ってて。
これがいいな、って思った。
手は届かないけれど、視界には映るこの距離。君は俺が気掛かりで、俺は振り向いて大股3歩で君に手が届く。
前を向いていても他に気を取られていても、君は俺の後を着いて来てくれる。
俺はここで初めて、君の恋人になれたら素敵だなって思ったんだよ。
付いた傷を許すことができずに、腐った想いを引きずったままで。気ままに自由に、せっかく人から鳥に戻ったんだから暫くはこのまま、って。
現実味は全然なかったけれど、思いがけず湧いた気持ちに驚いていた。
地上へ飛び降りた俺を、君は受け止めようとして地球の引力に縫い付けられて。
二人で砂まみれ、奔放は見ぬふりで軟弱な彼を詰れば、もっと鍛える、って。俺一人くらい軽々支えられるように。って。
プロポーズみたいだ、昨日言い損ねた台詞を紡ぐ機会は再び巡って、彼の様子と気持ちが伝わり始める。
ほんとは、言わないでほしかった。あの時本当にそう思ってた。
君が好きだった。でも付き合う気がなかった。
深く関わることが、怖くて。失うことに、怯えて。
せっかく仲良くなれたのに、断ったら離れてしまう気がして。不用意なことができなくなる気がして。
遠回しにはぐらかしても、手遅れ。
俺は言葉が返せなくて。一言、当たり障りのない都合の良いありがとう。
気まずそうな君に、顔を曇らせているであろう君に、何か言わなくちゃって必死になって。随分と頼りなくて曖昧な崩れた台詞を並べ散らかして、泣きたいのは彼の方だろうに実際泣きそうなのは俺だった。
気持ちは不確か。
決意も結べない。
こんなにも曖昧な、中途半端な俺でいい筈がないのだけど、君はそれでも、いいの?
答えは、思いも寄らない、俺がもうずっと長い間求めていた台詞。
断言できるよ、この涙が零れた瞬間、俺は恋に落ちた。
>DATE.0106.SUNSET.
君に惚れた。
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