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⊂恋は★全力失速⊃
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451 :
津多茜
2009/12/01 07:50
遠征を終えてやっとのことでスクールに戻ってきたのは、とっぷり陽の暮れた午後22時。
帰りの車内には車を運転してる監督と、俺のみ。
スクールはもうとっくに閉まってて、車は駐輪場に止まった。
スクールの建物と駐輪場は微妙に距離があるから、監督にしては気の利いた判断だ。偉いぞ、冬間近の夜道なんかで過ごすのは一秒だって短い方がいい。
変な輩は居ないな、と妙な心配をする監督。いや、俺男なんで。つーかそこまで遅くないし平気ですってハハハ。
お疲れ様です、車内に忘れ物ないです、ありがとうございました、お気を付けて。
並べられるだけの決まり文句を並べてから車を降りた。
一台だけぽつん、と止まってる俺の自転車はキンキンに冷えてた。
サドルとかうっすら白い。何だこれ、霜か?ケツ冷えんじゃんヒィイ。
とにかく早く帰ろう。
飯まだだし。風呂入りたいし。つーか寒いし。
チャリンコの鍵、鍵っと…。
………。
…………………。
>………ね、え…!!!
やっとウチの日記っぽくなってきただろ、畜生。
鍵がない…!気付いたのは割と早かった。
監督待って…!あのオッサンが走り去るのも早かった。車の後ろに付いた赤い反射板がもうずっと向こう。まだ見えたけど、追い付く筈もない。
ああ、くそ。
忘れてた、それもすっかり。近年稀に見る忘却っぷり。
いつもは、こんなに遅くなることないからスクールがまだ開いてるんだ。
だから、手荷物が入ってる鞄から財布と携帯だけスポーツバックに詰め替えて、残りの不要な荷物をロッカーに入れといても問題なかった。
でも今日は別だ。
帰れないじゃんか…!
どうする、俺。
歩いたことないけど、一時間くらい歩けば帰れないこともない筈だ。
でも絶対やだ。
ただでさえ朝8時から今まで遠征でテニス漬けだったんだぞ、その上スポーツバック背負ってウォーキング一時間とかどんだけな苦行フラグ立ってんだ。無理無理無理。
つーか寒いし。
つーかせっかく変質者居ないか確認してから降ろしてもらったのに何、この状況。マジ無意味。
とりあえず、親に連絡が上策だろ。
まず間違いなく馬鹿にされるけどまあ仕方ない。耐えるしかない。ああもうほんとばか。
#あ、もしもし母さん?斯く斯く然々でさー、んー、うん…は?着替えとか関係ねーだろ、車乗ってんだし…ええ、あー…わか、った。ハイハイ、じゃあな。
……なんか微妙にローテンションな母が俺に追い討ちをかける。絶対馬鹿ねえ、の一言はくるだろうと思ってたのにそれもない。唯一ごねたのがもうパジャマに着替えちゃったけど…って、何の問題があるんだ、今?
しかもだから行きたくないとかじゃなくてそれでもいい?みたいなニュアンス。今更息子相手にそこ気にするか!?
つーかこの温度差が嫌だ、耐えられない…!いっそS・A・ラングレー並みの罵倒でアンタ馬鹿ァ?って叱責してほしかった。
いやそれはそれで凹むけど。
こうして俺は、夜道を歩き始めた。
なんか申し訳ないから少しでも距離を縮めようと思って。
お、これ意外と歩けるんじゃね?車で拾われるまでに半分くらい距離稼いでおくか、もしかしたら着替えてるかもしれないし…とか、無駄なチャレンジ精神を湧かせつつ。
こういう妙な逆境の時って、変にテンションが上がる。
星が綺麗だなぁ、とか。夜空を見上げることもあまりしないこの頃だったから。
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