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静かの海
 ┗451

451 :日吉若
2009/03/10 00:03

>2008.3.10の跡部部長へ。

アンタに手紙を残すのは、499にしておこうと思ったんですが。
以前話に聞いた過去への手紙みたいに、俺も書いてみようかなと思ったんです。単なる思い付きですけどね。

何の事か解らないでしょうね。というか、今の俺とアンタはただの部活の先輩と後輩で、
しかもアンタは俺の事なんざほとんど眼中にないはずだ。違いますか?
これを俺が書いているのは、2009.3.10です。まだ日付が変わったばかりですね。
アンタは前日、俺のために徹夜をして、今は疲れきって隣で寝ています。誰の隣って、勿論それは俺の隣ですよ。

結論から言います。今の時点でアンタにとっては興味のない後輩の一人である俺と、一年後のアンタは恋人同士です。

…今どんな顔してるんだか、物凄く見てやりたい。驚いてますか?それとも面白がってでもいるでしょうか。
何を馬鹿げた事を、と思っても構いません。この事実を知ったアンタがどうしようと、「今」の俺にとってはこれが現実です。
何ならアンタの体の黒子の位置でも…ああ、泣きボクロだけじゃなく、ですよ。勿体無いから書きませんが。

今日の夕方、俺は初めて自分からアンタへメールをします。とても個人的な内容です。
俺達の交流は、そんな形で始まります。アンタがメールを返してくれた事は、今でも奇跡だと思ってますよ。
今考えても俺のメールは実にトゲトゲしく、アンタがそれのどこを気に入ってくれたんだか、さっぱりだ。
夕方、部活が終わった後です。楽しみにしていて下さい。

今のアンタは、当時の俺にとってとても厄介な人でした。
こっちを挑発するように揶揄ってくるくせに、本当に不愉快な思いをさせるわけじゃない。
それよりももっと、軽口を叩き合える事の気楽さを俺にくれました。
俺の言葉はきっと耳障りのいいモンではないのに、アンタはそれを全く気にしなかった。
…当時の俺は、それをアンタの鋭さと勘違いしていましたが。本当は、ただ無頓着だっただけ、でしょう?もう知ってますよ。
アンタは自分のやりたいようにやる人で、だからこそ俺がやりたいようにやっても怒る事はなかった。
沢山の事を、俺に聞いてくれました。解らないからと投げ出すでも嫌悪するでもなく、理解しようと努めてくれたのがアンタです。

数日後、アンタの携帯には俺の、俺の携帯にはアンタからのメールが届かない状態になります。
…3日、ぐらいですかね。それまでは一日に何通もやりとりをしていましたから、不測の事態です。
アンタにとって俺は食えない後輩で、飽きっぽさでメールを止めたと感じるかもしれません。
が、ただの事故です。確認して下さい。自分からメールを送って下さい。というか送れ。じゃなきゃ俺が悩みます。

…っと。隣のアンタが起きちまいました。こういう時だけ目を覚ますんだから厄介な人ですね、全く。

>>450

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450 :日吉若
2009/03/10 00:03

シャワーを浴びている隙に、続きを。

一ヵ月後、俺はアンタに昔の話をします。意外かもしれませんが、一ヶ月の間にも沢山の話をアンタにします。
アンタはそれを聞いて、時には笑い飛ばし、時にはお前は正しいと認めながら、自分の話も聞かせてくれました。
一ヶ月目の夜、俺が語る事は、アンタの過去から比較すればきっととてもチャチな、痛みにもならない痛みだろうと思います。
全てを話して肩の荷が下りた俺に、アンタは自分の話をしてくれました。
あまりの痛みを淡々と話すアンタに、俺は悔し泣きってのを試合以外で経験する羽目になった。

アンタは自分の痛みなんざ大した事がないと思ってるでしょう。
自分は恵まれていると思っている。
アンタの問題はアンタの中だけにあって、他人の評価よりも何よりも、アンタが戦っているのはアンタの中の自分自身だ。
それでも俺は、…一ヵ月後の俺も、「今」の俺も、変わらずに、そんなアンタを守りたいと思ってる。

傍から見たアンタはとても強い人だ。人の評価に惑わされず、自分のやりたい事を貫いている。
人を率いる事にも長けていて、中立にも立てる人だ。アンタは本当に、とても真っ当だと思う。
人の弱さも許容してしまえる。辛いんだろうと思いやる事も出来る。
そして、短所が大きくとも、その中にある長所にだって気付く事が出来る。
何か一つ嫌になると、途端にうんざりとして背を向けちまう俺とは段違いの包容力です。
でも、その包容力の源を「今」の俺は知ってます。
だからこそ、そんなアンタの内側を、俺は守りたい。
アンタが本当に、自分の全てを肯定し、愛せるようになれたらいいと思う。

跡部部長。
今のアンタは、一人じゃない。だけど、とても一人だ。
それをとても辛いとは思っていないでしょう。その痛みは、奥底に眠らせているモンだから。
だけど「今」、アンタは一人じゃありません。今は二人でいます。だから何も怖がらないで下さい。
1年の間、アンタと俺は沢山の時間を共に過ごします。沢山の話をして、何度かすれ違う事もあります。
その度にアンタがくれた思いやりを、「今」の俺はとても大事に思っています。

いつだって、俺はアンタに惹かれてた。いつか、雨が降る中木陰で雨宿りをしたら、この手紙を思い出して下さい。
アンタが俺に惹かれていくように、俺もまたアンタを愛しく思っていたのだと、頭の片隅にでも置いていて下さい。
予告しておいてあげます。
1年後、アンタは今よりもずっと幸せになってる。変わらないと思っていたモンが、どんどんいい方向へ変わっています。
そしてその横には常に俺がいます。
鈍くて、野暮で、一度寝たらなかなか起きないアンタに、俺はたまに拗ねたりするでしょう。
その度アンタは困るでしょうけど、解決方法は簡単ですから、あまり悩まないように。
…その解決方法は、1年間の中で探していって下さい。

これからアンタが俺と過ごす一年が、アンタにとっても大切で、色鮮やかな物になる事を祈りつつ、ここで待っています。
だから慌てずに一歩一歩を踏みしめて、ここまで辿り着いて下さい。
跡部さん。愛してますよ、誰よりもアンタだけを。

2009.3.10  日吉若