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静かの海
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493 :
日吉若
2009/06/03 04:20
体の奥にじっとりとした熱が篭っている。
奪われたいと感じる事の不自然さを知りつつも、あの人の腕に抱かれれば容易く浅ましい体が陥落してしまう。
意図せず弱点に触れられる度に身を竦めれば、あの人は笑って謝罪を口にする。…または、調子に乗るかのどちらか、か。
体格がそれほど違うわけじゃない。むしろあの人の方が細身なんじゃないかと思うぐらいだ。それなのに、あの腕の力強さに酔いしれる俺がいる。
背中に腕が回る、あの瞬間が堪らなく好きだ。
首裏を通る腕の、筋肉の動きを感じる瞬間が好きだ。
胸元に鼻を寄せて、感じる汗の香りが好きだ。
少し熱を帯びた低音の、あの声が好きだ。
結局のところ俺は、いつだってあの人が欲しい。
流されている部分も多少はあるだろう。だが、俺の中にそれを欲しいという願望が存在しないのなら、けして流されはしない。
流されるのは、流されたいという願望が奥底にあるからだ。
いつだったか、出逢ってまだ間もない頃。
あの人は、俺の嘘を、「壊して欲しいように見える」と言った。
見破って欲しいがための嘘を、あの人はいつでも見つけて解き明かそうとする。時には野暮に問い掛けさえもする。
だから、これもそういう事だと早く悟ればいい。口先ばかりの拒否は、ただの戯れだと気付けばいい。
体の奥が痛むのに、それでもまだ欲しいと、強欲な俺が眠っている。
骨が軋む程に強く抱き合う、あの瞬間。
言葉になんかしなくても、あの人の気持ちが触れた肌から伝わってくる。
抱き合う目的の半分以上は、あの抱擁にあるとさえ感じるのはおかしいだろうか。
もっと近くにと、いつだって願っている。
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