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リリィ、
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110 :
財前光
2010/09/18 20:54
ふいに与えられた人の優しさに触れると、必ず思い出す記憶がある。
何時やったかな。
練習試合の帰りに乗った電車ん中。
そん時は夕方のラッシュで仰山混み合ってて。
最悪な事に、俺は風邪を引いてめっちゃ怠かったんを覚えとる。
人混みに押されながら漸く掴まった吊革。狭い車内。熱でボーってする頭。止まらん咳。
隣に居ったオッサンの迷惑極まりない嫌そうな顔。
好きで風邪引いとるんちゃうわ、て思いながら睨み返して。どうせやったら遷したろ、くらいに考えとった時やった。
#ダイジョウブ？
聞こえて来たんはカタコトの日本語。
どっからやろうて周りを見渡すと目の前に座ってはった東南アジア系の女の人が、俺に微笑みかけとって。
初めて会う人やんなァ、なんて考えとったらそん人は席を立って俺を其処に座らせてくれた。
突然の事やったし頭はガンガンするしでポカンとそん人の顔見る事しか出来んくて。
せやけどそん人はずっと笑顔で話し掛けてくれはって。
#「カゼ、ツライネ。ダイジョウブ？ノドイタイ？コレ、アゲル。ナメル、ノドイタイナクナルヨ。」
何やよう分からん外国産の飴ちゃんまでくれはった。
せっかくやし、て貰うた飴ちゃん口に放り込んでまた顔を見たら、めっちゃ優しい顔して頭撫でてくれはった。
照れ臭くて何も言えんと黙っとったら、そん人は次の駅で降りはって。
後ろ姿を目で追っ掛けたら、やっぱり笑って手を振ってくれはった。
結局最後までありがとうの一言は言えんまま。
その後も何度か同じ電車に乗ったけど、会えるはずもなく今日に至る。
多分、この先も俺はそん人ん事忘れへんと思う。
見ず知らずの他人。余所の国のモンなんに、惜しみなく与えてくれた優しさや思いやり。
俺は絶対に忘れへん。
そんでアンタみたいな人間になりたいて思う。
アンタみたいに暖かい人間に。
今はどうしてるんかも、日本にいるんかも分からんけど。
ここから伝わるとええな、と。
あの時は何も言えんと済みませんでした。
そして、ありがとうございます。
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