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From Crazy Teatime
 ┗18

18 :忍足侑士
2009/08/23 19:28

吸い込まれそうな気がして足を止めた。



少しばかり家出るのが遅れて、何時もは乗り換えんホームに降りた。
一緒に降りた人は仰山居って、直ぐ様ホームは溢れて行列が出来た。
目の前に着いた電車の扉が開いて、流れに乗って俺も其処に近付く。



人の溢れとったホームは一瞬で閑散として。
朝の日差しに何だか其の風景は不似合いで。
何処からか蝉の声が聴こえた様な気がした。



目の前に開いた扉に周りの人全部吸い込まれてくみたいに見えた。
後一歩踏み出したら俺も同じ様に吸い込まれてまう様な気がした。



朝の日差しも。
遠い蝉の声も。
口開く電車も。
消えた人達も。



総てが不似合いで、総てが噛み合っとらん風景。
其処に居る俺も不格好なパーツの一つ。
あんなに居った人は何処に行ってもうたんやろ。
目の前の箱ん中はみっしり詰まっとる訳や無い。
まるで吸い込まれするりと消えてもうたみたい。



響くアナウンス。
扉が閉まる合図。

―――我に返る。



閉まり掛けた扉に飛び込んだ。
俺の背後でぴたりと閉まる口。
疎らな車内、呆けたんは一瞬。



俺は吸い込まれた訳や無いし、消える筈も無い。



表向き平然と、内心は呆然と。
空席に腰落として見渡す車内。
虚ろな空間、縹渺と移る景色。



…そないな事在る訳無い。
そないな事在って堪るか。
長く息吐いて頭を振って。



夏の余韻が耳許で囁いた戯言に翻弄される。

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