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月とネオン
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306 :
跡部景吾
2012/02/28 21:55
俺の周りからむせかえる様な…甘い香りがする。
まるで合成されたストロベリーの様な不快な甘さ。
それに気がついたのは2週間程前だった。
いつもの日常、毎朝のランニング、通学、朝練、授業、ランチ、生徒会に部活、夕食に自室での読書…その香りは常に俺に付きまとった。
実は俺の香水でした、ボディソープの類いでしたなんてオチじゃねぇ。確かに2週間前から存在するこの香り。俺は気が触れたのか?
自身のトレーニングウェアに鼻を押し当てて確認する。甘い香りはしない。ブレザー、ユニフォーム、ルームウェア、ナイトウェア、バスタオル、ベッドに寝具からもその存在を見出だす事は出来ない。だが、確かに俺の周りから香る甘いストロベリー。
こうなると体臭なのか?と思うしかねぇ。だが、ただ一時だけ甘い香りから解放される時間がある。
それは俺のシャワータイムだ。部室であろうと、屋敷であろうと「シャワータイム」だけはその呪縛から解き放たれる。よって体臭であるわけがねぇ。大体俺の体臭がストロベリーってのもどうよ。
そして、今日もベッドに入ると、先程までは香らなかったストロベリーの香りに包まれた。
俺自身の体臭じゃねぇんだ、原因は必ずどこかにある。
ベッドから起き上がれば数人の使用人を自室に呼び、事の流れを話す。俺が狂ったと思うなら、この部屋から出て行けば良い。そう言い放てば、皆が黙った。執事長のミカエルが「失礼します」と一言紡いで俺のナイトウェアの袖の鼻を寄せる。「特に景吾坊っちゃまの言われる香りは感じませんが」という答えに、俺は苛立って踵を返した。それと同時に、否定の言葉を寄越したばかりのミカエルが言う「今、確かに景吾坊っちゃまの周りから甘い香りがしました!坊っちゃまが動いた瞬間に」
いよいよおかしな事になった。俺自身、俺の衣服から香らない香りが存在する事を第三者の前で証明したんだからな。こちらに集まった使用人達の視線に言っておく。俺は香料万歳キャンディを口に含んではいない。
ミカエルの連絡で使用人にSPが加わり、数人で片付けるはずだった物が数十人に膨れ上がる。
自室を隈無く調べても香りの根元、いや香りすらしない。ベッドにソファー、カーテン、書棚に至るまで調べても解決しない。ただ、ここで一つ分かったのは、俺が動くと俺の周りの空気が甘く香るって事だ。一先ずナイトウェアからルームウェアに着替える。ルームウェアも念の為に用意させた新しい物だ。それでも俺に纏わりつく甘い香り。
部屋に異常は無い、こうなると衣装だ。ランドリー室に足を向ける。俺の常の服はそこで用意させている。制服からジャージ、下着に至るまでランドリーからクローゼットルームに運ばれて保管、随時使用人が整えて俺の部屋に運ぶ。
ああ、下着に至るまで…下着…。シャワーに下着、下着の香りを確認しようなんてヤツはいない。下着は常に身に着けている。
足早に掛けクローゼットルームに入れば驚きを隠せない使用人。確か深夜のランドリーの担当者だ。クローゼットルームに入ったのは初めてで、俺は興奮からかキツく言葉を掛ける。「俺の下着はどこに保管している?今すぐ案内しろ!」二人は俺を部屋一区画に、ガラスの張られた棚の前へ案内した。その扉に手を掛ければ…
ビンゴ。
むせかえる甘いストロベリー。俺の周りから香る物よりも濃厚で、明らかに原泉だ。追い付いたミカエルがその棚から小さな包みを摘まむ。本当に小さな、手の平に乗る程の物。
サシェ…か…。どうして気が付かなかった?何故こんな物が紛れた?と問おうとランドリー担当者に視線を向けて肩を落とした。それ特殊部隊で使えるんじゃね?って程の見事なマスク。花粉症かよ…。
勿論、コイツらが俺の物、事に勝手な事はしない。もしするならば、この屋敷でそれなりの影響力を持っている古株の人間が関わっている。執事長のミカエル以外で俺に対等に意見が出来るヤツは…一族以外でアイツしかいねぇ。この屋敷でミカエル同様自室を持つ男。
俺に「余裕から見いだせる遊び」の部分を教え、子供だからこそ使えるリーダーシップ論、そして「l/ibenter h/omines i/d q/uod v/olunt c/redunt. 」と言う言葉を教えた男だ。
そう、この言葉は俺の解釈によって今の俺を作っている。
まぁ、とにかくそこのマスク女、明日病院に行け。紹介状は作っておく
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